アメリカのワシントンにあるPEWリサーチセンターは、折々、アメリカ国民の世論調査を行っていて、アメリカ国民も関心事が何かを教えてくれる。同時にその結果は、アメリカ政治がどの方向に向かっているのかを、示してくれる便利な組織だ。
そのPEWリサーチセンターが、ヨーロッパとロシアで、反ユダヤ教徒、反イスラム教徒感情がどの程度なのかを調べた。その結果は以下のとおりだった。
(反ユダヤ教徒)
:スペインー46パーセント
:ポーランドー36パーセント
:ロシアー34パーセント
:ドイツー25パーセント
:フランスー20パーセント
これに対し反イスラム教徒の割合は以下の通りだった。
(反イスラム教徒)
:スペインー52・6パーセント
:ドイツー50パーセント
:ポーランドー46パーセント
:フランスー38パーセント
この結果は何を意味しているのか。反ユダヤ教徒について述べれば、スペインは1492年にユダヤ人迫害を行った国でありで、歴史的にも、ユダヤ人嫌いの傾向があるのだろう。ポーランドはナチのユダヤ人狩りに、積極的に協力した国として知られている。ロシアはポグロムつまり、ユダヤ人の大量虐殺を行った国だ。ドイツはナチの国家だった。フランスはユダヤ人狩りで、ナチに協力した国だということになろう。
他方、反イスラム教徒について言えば、スペインは最近では、イスラム原理主義者によるテロが起こり、大きな被害をこうむっているし、歴史的にはイスラム教徒に、支配されていた国でもある。ドイツはやはりトルコ人移民問題があろうし、その他のイスラム教徒が定着し、社会問題、人種間対立を深刻化させている国だ。
ポーランドの反イスラム教徒感情については、あまりよくわからない。フランスの場合は北アフリカからの、移民者の数が非常に多い、ということによるのではないか。
問題は、反イスラム教徒感情と反ユダヤ教徒感情の調査を、なぜPEWがこの時期に、行ったのかということだ。アメリカ国内で反イスラム教徒感情があることは、述べるまでも無いが、反ユダヤ教徒感情も、もう一方に見え隠れしている、ということの反映ではないか。場合によっては、この調査結果が、アメリカ国内でも反ユダヤ教徒感情を扇動する可能性がある、という懸念を抱くのだが。