逆回転に気づいたシャロンとオルメルト

2008年9月16日

 

 イスラエルは中東にあって、夢のような国家だといわれて久しい。アラブの多くの敵国を相手にして、イスラエルは常に勝利してきた。中東にあって資源が無いにもかかわらず、工業業を発展させ、農業を発展させてきた、、。イスラエルに向けられた賛辞は、枚挙にいとまが無いほどであった。

 しかし過去1-2年、イスラエルはその実態をさらけ出し始めた。レバノンのヘズブラとの戦争における敗北がその明確な始まりれだった。以来、イスラエルは内部に、自信喪失と対立を深めていった。

 こうした今日のイスラエルの実像に、いち早く気づいたのがシャロン元首相だったと思われる。彼はガザ地区をパレスチナ人に返還することで、一定の妥協をパレスチナ人との間に、構築しようと考えていた。しかし、彼は志半ばで倒れ、自身の手で実行することができなかった。

 シャロン氏の後に、イスラエルの首相となったオルメルト氏は、ヘズブラとの戦争で敗北し、多くのスキャンダルにまみれ、不名誉な最後を、まもなく迎えることになっている。たぶん彼の後継の首相となる人物も、多くの難問を抱え込むことになろうことが、今のうちから予測される。

 中東の先進国、民主国家といったイメージは、ほとんどがアメリカを中心とした、外国からの援助で作られていた、幻影に過ぎなかった。イスラエルはかつてはイギリスの、現在ではアメリカの国益のために設けられた、前線基地に過ぎなかったのだ。

 アメリカがリーマン・ブラザーズの破産に見るように、金融恐慌の前夜を向かえ、イスラエルへの支援をする余裕など、無くなったのだ。これまでイスラエルが仕組んできた、イラク北部のクルドへの工作も、結果的には失敗に終わることが、ほぼ明らかになっている。それはトルコの同地域への、平和的な貢献と台頭の結果だったのであろう。

 グルジアも同じように、イスラエルの対外工作の、失敗のケースになろう。グルジアはロシア軍の侵攻によって、国土の相当部分を失いつつある。それについては、アメリカもヨーロッパも、本気では介入する気配が無い。そして、イランに対する対応でも、アメリカはあるいは軍事攻撃を、断念するかもしれない。そうなれば、イスラエルはすべてのゲームを、失うことになる。

 そして、その後にイスラエルが直面するのは、マハムード・アッバース議長という詐欺師まがいの相手ではなく、強固な意志を持った、ハマースのハニヤ首相やミシャアルなのだ。彼らとの間に、イスラエルは有益な接点を有していない。

 何の正統性も実力も無い、国際乞食のようなやからを相手にし、何とか一定の合意に達しようとしても、彼らがパレスチナの地から、追放される可能性すらあるのだ。オルメルト首相は西岸の98・1パーセントの土地を、パレスチナ人に返還して、よき隣人となることを夢想しているが、彼が返そうとしている相手は、もともと西岸に居住していた、人たちではないのだ。銃を携えて、イスラエルの許可を得て、侵入してきたグループに過ぎないのだ、。

 イスラエルがこれまでの、自分たちをだましてきた嘘をかなぐり捨て、事実を明確に認識し、交渉すべき相手と真剣に交渉を始め無ければ、せっかくの大決断による方針変更も、何の成果も生み出すまい。イスラエルは幸運という道を、逆戻りし始めていることを、正確に認識すべきであろう。

 それ無しには、イスラエルの将来は無くなり、イランの強硬派アハマド・ネジャド大統領が声高に叫ぶように、地球上から消滅してしまう、運命に向かうことになろう。大きな方針転換を行い、自分の運命を好転させようと思うのであれば、中途半端なごまかしで、乗り切ろうとしてはだめだ、そのことに、イスラエル国民と政府に、気づいてほしいものだ。