オルメルト首相の発言の重み

2008年9月14日

 

イスラエルのオルメルト首相が、非常に意味の深い発言をした。それはイスラエルの国会クネセトで行ったものだ。

 彼はまずナブルスに近いイツザル入植地のイスラエル人入植者が、ヨルダン川西岸地区で行ったことは「ポグロム」に等しい、と発言したのだ。ポグロムとはロシア帝国のもとに生活していたユダヤ人が、何の正当な理由もなく、ユダヤ人であるということだけで、大量に殺害された、悲惨な歴史上の出来事の呼称だ。

 その犠牲者の末裔であるユダヤ人が、イスラエルでパレスチナ人に対し、同じような残逆な行為を行ったというのだ。まさに、これ以上無いと言えるほどに、厳しい発言だと受け止めるべきであろう。彼オルメルト首相は、その仕返しはもっとも強力な形で、行われようとも警告している。

 オルメルト首相のもうひとつの重要な発言は「大イスラエルという考えは終わりだ。」という発言だ。これまで多くのユダヤ人イスラエル人は、イスラエルという国家は神から与えられた土地であり、その境界線は、エジプトのナイル川から、イラクのユーフラテス川までの間だ、と主張してきている。

 イスラエル人はこの夢想の中で、多くのものを失ってきたことに、彼は気がついたようだ。

 同時に、国際社会はイスラエルの拡張主義を、もう支援してはくれないことにも、気がついたようだ。

 常識的に考えれば、当たり前のことなのだが、世界に散らばるユダヤ人や、イスラエル国内に居住するユダヤ人たちには、これまで常識が無かったのだ。

 神が約束した土地という夢想の中で、彼らは酔いしれてきていたのだ。しかし、オルメルト首相は二つの国を希望しないで、パレスチナ人を隣人として居住するのであれば、土地を分かち合わなければならないとも語っている。

 たとえ、イスラエルが地域最強の国家だとしても、これまでのような対応を続けるならば、和平のパートナーを失ってしまおうし、国際的支持も失ってしまおう、とも語っている。それはまさに、過去40年の間、イスラエルが過ごしてきた、状態の延長であろう。

 オルッメルト首相は自身を取り囲むスキャンダルのなかで、いま辞任に追い込まれようとしているが、その状態の中で、「何が神の意思であり、何が神の意思にそむくか」を知ったのではないか。時はまさに聖なるラマダンの月だ。