日本のある新聞が、ガザからのレポートとして「ハマースは支持を減らしている」という内容の記事を掲載している。
それはある意味では正解であろう。ハマースのイスラム原理主義的な行政が、ガザ住民から必ずしも歓迎されているとは言えまい。しかし、問題はハマースがガザ住民に対し、基礎的な生活の支援を、実行できているか否かであろう。
つまり、ガザの住民はパン、砂糖、お茶、コーヒーが手に入るのか電気は、、、といったことだろう。今の時期はどこの国でも、インフレが押し寄せ、庶民の暮らしは大変なのだ。したがって、ハマースの住民対策が不十分でも、そのことで支持を減らすとは、考えない方がいいのではないか。
そのハマースはいま、アラブ世界ではどのような立場にあるのだろうか。ハマースと敵対関係にある、イスラエルのエルサレム・ポストが、面白い記事を掲載しているので、その一部をご紹介しよう。
ヨルダンの情報部はハマースとの間で、対話を再開することを、公式に発表している。1999年に、ヨルダン政府はハマースのリーダーであるハーリド・ミシャアルを追放して以来、関係は最悪の状態にあった。
ヨルダンが恐れたのは、ハマースがヨルダンに拠点を設け、反イスラエル宣伝活動を活発に展開したり、ヨルダンからのゲリラ攻撃を、始めることであったろう。したがって、ヨルダンがハマースのリーダーを追放する決断に至ったのは、当然の帰結であったろう。
それがここにきて、関係が再開されることになったというのは、中東地域の政治状況が、大幅に変化しているということであろう。ヨルダンばかりではなく、エジプトもまたハマースに対する対応を変化させている。ラマダン(断食月)ということもあるが、エジプト政府はガザとエジプトとの国境通過点を、開放すると発表したのだ。
同じように、レバノンのイスラム原理主義組織ヘズブラと、エジプトのアブルゲイト外相が会談しているし、フランスのサルコジ大統領は、シリアとの関係改善に本格的に乗り出してもいる。
これら一連の動きは、中東問題全般に関して、アメリカの方針だけではだめだ、という認識が高まってきているからではないか。
トルコがイスラエル・シリア関係改善の仲介をしたり、イランの緊張緩和を図っているのも、その一例であろう。中東問題の解決を、アメリカ一国にだけ委ねているのでは危険だ、という判断が各国の間で広まってきているということであろう。