グルジア問題を機に、アメリカとロシアとの間で、緊張が続いているが、この緊張関係は、多くの国々に影響を及ぼしている。ロシアの周辺諸国からは、ロシアが再度軍事侵攻してきて、ソビエト時代のように自国を支配下に置くのではないか、という不安感が募っているようだ。
そうしたロシアの周辺国が、抱いている不安をあおるかのように、西ヨーロッパの中からは、ロシアが周辺国に、軍事侵攻することを懸念する、という意見が出始めてもいる。確かに、ソビエト時代に支配されてきた東ヨーロッパの国々や、中央アジアの国々、そしてコーカサスの国々は、実感を持てロシアの軍事侵攻を、不安に感じていよう。
それほどではないが、ロシアとトルコとの間でも、ある種の緊張関係が始まっている。これまでロシアは、一般消費物資を中心に、トルコ製品の巨大な市場になっていた。トルコは30億ドルとも40億ドルとも言われる輸出を、ロシアに対して行ってきていたのだ。
同時に、ロシアもトルコに向けて、エネルギーを輸出してきており、この額も30億ドル程度といわれている。つまり、ロシアとトルコはお互いに、相手を大きな取引先としてきているのだ。この相互依存関係に、最近影が落ち始めている。
トルコは直接ロシアに対して輸出するほかに、ヨーロッパを経由しても輸出しているが、このトルコ製品を積んだトラックが、最近厳しい検査を受けるようになってきているのだ。
このロシアによる、トルコ製品の国境地帯での検査に対し、トルコ側も同様に、国境での検査を強化する、という対抗措置をとっている。一説によれば、トルコがアメリカの艦船に対し、ボスポラス海峡の通過を認め、アメリカの艦船が黒海に入り、グルジアに到着したことに、ロシアが腹を立てたのだろうということだ。
しかし、このロシアとトルコとの緊張関係は、案外,底が浅いのではないか。輸入禁止ではなく、現段階では相互に、嫌がらせをしているに過ぎないからだ。つまり、お互いが牽制しあっている、ということではないか。
最近、トルコがグルジア問題の解決に、活発に動いているが、それはロシアにとって、必ずしも不都合な話ではあるまい。ロシアがトルコとの関係を、断絶するようなことになれば、ロシアは完全に西側とのパイプが、断ち切られたような状況になるからだ。ロシア・トルコ関係が良好な状態に、戻ることを願いたい。