トルコ傾斜を強め始めた湾岸諸国

2008年9月 1日

 ここにきて、やっと湾岸諸国がトルコの存在価値を、高く評価し始めたようだ。しかも、その傾向はアメリカのイラン攻撃の可能性が、次第に高まっているなかで、現実的な危険からさけることに、的が絞られてきたようだ。

 湾岸諸国のトルコに対する関心は、2000年代に入り、エルドアン首相というイスラム教に理解を示す政党が、与党になってからは前進が見られていた。しかし、イギリスが埋め込んだトルコに対する、ネガテイブなイメージがあったことから、湾岸諸国はトルコとの間に、もう一歩踏み込めないものがあった。

 しかし、2005年ごろから湾岸諸国は、トルコの持つ外交力、軍事力、経済発展の実績などを目の当たりにし,トルコ企業が湾岸諸国に進出するのを、大幅に認めるようになっている。

 たとえば、ドバイで日本企業が進めているモノレール工事には、トルコの企業が参加しているし、トルコ製品が湾岸諸国の市場に出回ってもいる。口数の多いアラブ人とは違って、トルコ人は不言実行型の人が多いことも、好感を抱かれている理由であろうか。

 近く、サウジアラビアのジェッダで開催される、湾岸諸国とトルコの経済・治安・政治協力会議では、トルコと湾岸諸国との間で、覚書が交わされる予定だということだ。

 以前から、湾岸諸国はトルコ軍の駐留を希望してきたが、今回の会議では具体的な話に及ぶかもしれない。トルコ軍が規模に関係なく、湾岸諸国に駐留するようになれば、イランもそれなりのトルコ軍に対する、敬意を表さなければならなくなり、軽々には湾岸諸国に対する、恫喝をしなくなろう。

 同時に、トルコは湾岸諸国とイランとの、良好な関係を構築していく上で、橋渡し役ともなろうし、アメリカの湾岸地域のプレゼンスを、低下させることにもつながろう。今後の推移が興味深い動きだ。