緊張生み出しているのはUAE・イラン?

2008年8月20日

 アメリカ・イスラエルとイランとの間で、緊張が高まっていることは、誰もが知っていることだが、この地域で新たな緊張が高まっている。それは、アラブ首長国連邦(UAE)と、イランとの関係においてだ。

 イランとUAEとの間には、1970年代初期に三つの島の領有権をめぐって、争いが起こっていた。それらの島とは、大小トンブ島とアブー・ムーサ島のことだ。イランはこれら三島について、領有権を主張し、1970年代に軍人を上陸させていた。もちろん、UAE側も黙ってはいなかった。UAEもイランと同様に三島の領有権を主張したのだ。

 しかし、当時もいまも、UAEは石油大国であっても人口の少ない小国であり(450万人程度)、とてもイラン(8000万人近い)との間に、事を構えるだけの力はなかった。結果的に、イランとUAEとの間では、三島の領有権はUAEに認める代わりに、UAEがイランに対して三島の利用を、許可する形で話がついていた。

 しかし、ここに来てイランは三島の中の最大の島であるアブー・ムーサ島に、海難事務所と船舶登録事務所を開設し、しかも領有権を主張し始めたのだ。そのことは当然、UAE側を刺激した。事務所の開設で、イランが三島を永久に支配することをもくろんでいる、UAE側はそう認識したからだ。

 このため、GCC (湾岸協力機構)は、イランの三島に対する対応について討議し、UAEの主張を支持している。アブー・ムーサ島はペルシャ湾の出口、ホルムズ海峡に近い、12平方キロメートル、人口500人以下の小島に過ぎないのだが、場所が場所だけに、ここをどの国が実効支配するかは、国際政治のうえからも、大きな関心をもたれるのだ。

 イランがこの島を、本格的に軍事目的で利用することになれば、アメリカを始めとする、イランに敵対する諸国家は、対応に苦しむことになるからだ。では、何故この時期に三島問題が再燃したのであろうか。イラン側は来るべきアメリカとの戦争に備え、あらゆる手立てを、打っておきたいと考えていよう。

 そのひとつが、アブー・ムーサ島の軍事的活用ということであろう。他方、UAEにしてみれば、イランの今回の動きは、アブー・ムーサ島を始め、大小トンブ島をイランによって、永久的に領有されることになる、と懸念したからだ。

 加えて、アメリカはあらゆる形での、イランに対する締め付けを考えていることから、今回のUAEとイランとの三島をめぐる緊張問題も、アメリカによって活用される、可能性が高いのではないか。湾岸地域、中東地域では、種々の劇的変化が続いている。その変化の一つ一つに注意していかなければ、何時どのような、不測の事態が発生するのかを、見分けることは出来まい。