ヨルダンの英字紙、ヨルダン・タイムズのネットは、サイフルイスラーム氏の公職からの離脱宣言を、彼がカダフィ大佐の後継になる兆候だと捉えている。カダフィ大佐が革命の指導者として、自分の地位を固定する前には、大統領や首相といった公職を口にしていたが、最終的には何の公職にも就かず、リビア革命の指導者、といった漠然とした地位(?)に留まってきている。
サイフルイスラーム氏もカダフィ財団の責任者として、内外の問題解決に努力してきたが、今回公職から離れると宣言したのは、そういうことを意味しているのかもしれない。つまり、父親カダフィ大佐と同様に、あいまいな地位に留まり、人民主権というカダフィ大佐の世界第三理論に基づく、リビア国家の運営を指導していく、ということであろうか。この辺の判断は、アラブ人のほうが正確かもしれない。
ヨルダン・タイムズは、サイフルイスラーム氏が36歳であり、国内で最も強い影響力を持つ人物として紹介し、これまで西側諸国との問題の処理に、尽力してきたと賞賛している。なかでも、パンナム機爆破事件、UTA機爆破事件の補償問題処理や、ブルガリアの医師・看護婦のHIVに関る受刑問題と、彼らの釈放に、サイフルイスラーム氏が果たした役割は、十分評価するに値する、と賞賛している。
リビアのトリポリから南に、800キロ下がったセブハという街で、彼の行った演説の中で、公職離脱が語られたのだが、ヨルダン・タイムズはサイフルイスラーム氏が、公職から離れ彼の政策を検討し、短期間で復帰するのだろう、と予測している。
サイフルイスラーム氏の略歴についても、同紙は記述しているが、それによれば、1972年6月25日カダフィ大佐の二番目の妻の長男として、トリポリで誕生し、以後、トリポリ大学(ファーテハ大学)で建築学を収めた。そのため彼はムハンデス・サイフ(サイフ技師)というニックネームで、リビア人からは呼ばれている。
その後、オーストリアで仕事をし、ロンドンのスクール・オブ・エコノミクスで博士号を取得している。外国語は英語、ドイツ語が堪能で、フランス語もある程度使えるということだ。
日本でも展示会をやったように、彼が絵を描くことは、広く国際的にも知られているが、それ以外にも、海釣り、鷹狩り、乗馬も趣味だということだ。
ヨルダン・タイムズ紙の予測は、ほぼ正確なのではないか。カダフィ大佐も次第に、自分の権力をサイフルイスラーム氏に、委譲していきたいということであろう。他の息子たちの蛮行が国際的に、笑いものになっている中では、彼が後継者となるのは順当であろうし、歓迎すべきことであろう。