アハマド・ネジャド大統領のトルコ訪問

2008年8月20日

 イランのアハマド・ネジャド大統領のトルコ訪問は、世界から少なからぬ関心を持たれた。アメリカとの緊張のなかで、イランとの良好な関係を表面に出したいと思っている、国は少ないのではないか。

 そうした世界の国々のなかで、トルコは勇敢にも(?)イランとの良好な関係を、維持し続けているからだ。

なかでも、イスラエルはトルコとイランとの間に、どのような新たな発展が示されるのか、注意深く見守っていたようだ。しかし、イスラエルはトルコとイランとの間の発展を期待していたわけではあるまい。どちらかといえば発展的な状況が、出てこないことを期待していたのではないか。

そのイスラエルの立場は、アハマド・ネジャド大統領訪問が明確な成果を生み出さなかったことを、イスラエルがいち早く報じたこということによって分かろう。

イスラエルは、イランが世界のなかで、ますます孤立化していくことを、期待しているからだ。そして、イスラエルはイランが世界から孤立し、新たな制裁を受けることによって、核開発を思い留まることを、期待しているからであろう。

他方、トルコにしてみれば、イランとイスラエル、あるいはイランとアメリカとの間で、軍事衝突が起こることは、トルコに大きな経済的不安定をもたらすものであり、政治的な不安定をも、生み出す危険性のあるものだ。

したがって、トルコはなんとかイランを説得し、世界との緊張を緩和させたいと考えてきていた。加えて、トルコにとってイランは、重要なエネルギー資源供給国でもある。もし、これから冬に向かうなかで、イランがアメリカあるいはイスラエルによって攻撃され、イランのガスがトルコに入ってこなくなれば、トルコはその代替のガスの供給国を、探さなければならなくなる。

アハマド・ネジャド大統領のトルコ訪問では、イランとアメリカ・イスラエルとの、緊張問題が話し合われたことであろう。同時に、イランからトルコへの、ガス供給量の増加の問題も話し合われた。

しかし、今回のアハマド・ネジャド大統領のトルコ訪問では、明確な結論が出てこなかった。このことは、アメリカのトルコに対する、圧力によるのではないか、という推測が出ているが、トルコの石油大臣はアメリカの関与を、否定している。あくまでも技術的なつめが、足りなかったからだとし、近い将来(1ヶ月以内)に、ババジャン外相がイランを訪問し、この問題について継続討議すると語っている。

確かにその通りかもしれない。あるいは、トルコは今後1ヶ月以内に、アメリカやイスラエルが、イランにどう対応するのかを見定めてから、イランとの交渉を進める、ということなのかもしれない。それだけ、いまの時期は微妙だということであろう。