いま、トルコ国内ではこれまでとは、全く異なる種類の明るさが出始めている。それは、エルゲネコンがマスコミ批判の対象になり、政府がエルゲネコン問題の追及に、本格的に乗り出してきたからだ。
この欄で既に、何度となくご紹介したが、エルゲネコンとは、政治家、弁護士、裁判官、警察、軍人、ジャーナリスト、企業経営者、学者、マフィアなど、あらいる層のエリート(?)たちを集めた、トルコ社会の影の権力集団だ。
したがって、これまでこのエルゲネコンを、白日の下にさらせる政権は、過去には存在しなかった。もし与党がそのような動きに出れば、エルゲネコンは軍を動かしてクーデターを起こし、体制を打倒していたからだ。もちろん、過去に軍が行ったクーデターは、全てがエルゲネコンがらみだ、と言っているわけではないが。
野党も同様であり、エルゲネコン追求の動きに出れば、簡単に暗殺される状態になっていたのだ。ジャーナリストもしかりで、何人ものジャーナリストが、過去にエルゲネコン追求を試み、暗殺されているのだ。したがって、まさにトルコ社会におけるアンタッチャブルな組織が、このエルゲネコンだったのだ。
しかし、現在のトルコの与党AKPは、国民の広い支持と、欧米の支持を受け、遂に、エルゲネコン退治に乗り出したのだ。そして、エルゲネコンのメンバーの多くが、既にリスト・アップされ、公表されるにいたっている。
この結果、これまでまかり通ってきた、不正な取引や公金横領のシステムは、崩壊の方向に向かい始めている。既に、エルゲネコンのメンバーが裏で結託しあって、利益を得えることは、不可能になっているのだ。
この大きな変化を、一番喜んだのはトルコの大衆だった。彼らは、エルゲネコンの存在を知っていても、エルゲネコンが悪辣なことをしていることを知っていても、これまで何も出来なかったのだ。
今回の、エルゲネコンに対するトルコ社会の流れは、およそ、以下のようなものだった。
1:最初にAKP支持が拡大しAKPが与党に就任した。
2:AKPは次々に新しい方針を打ち出し実行して行った。
3:結果的に汚職が減りトルコの経済は好転して行った。
4:国民はAKP支持を強めていった。
5:警察はAKP支持に回った。
6:軍も与党に対する反対姿勢をやめ、協調路線を選択した。
7:結果的に、エルゲネコン追求に、反対する勢力が激減し、今回の対応が可能となった。
トルコ国民はいま、エルゲネコン退治が進むことによって、大きくトルコ社会が改善していくという、期待感を持っている。トルコ社会もインフレで苦境に直面して入るが、国民のほとんどは、明日への希望を抱き、与党AKPに対する信頼感を強めているようだ。