トルコ青年渋谷のケバブ・スタンド開店の話

2008年8月18日

 トルコの宗教慈善団体が選別した、優秀な学生たちが日本に留学してきてから、既に134年が経過した。彼らは修士、博士課程を終え、日本企業や外資に就職し、高給を取っている。

 それ以外のメンバーは、自営業を始め、トルコ製品の輸入販売、トルコ・レストランの開設、インターナショナル・スクールの運営、コンピューター・ソフトの開発会社、建築会社の経営などを手がけている。彼らに共通していることは、実に我慢強いということだ。

 そのうちの一人が、渋谷のセンター街に、ケバブ・スタンドを開店した。そもそも、彼がケバブ・スタンドを開店することを考えたのは、4-5年ほど前からのようだ。貧乏留学生が気軽に食べられ、日本人も喜んで食べてくれるケバブなら、商売として成功するだろうと考えたのだ。

 彼は日本テレビの確か「銭の虎」という番組に出て、ケバブ・スタンドの構想を熱っぽく説明し、あるスポンサーから、1500万円の出資を受けることに成功した。話は順調に進んだ。渋谷の一等地に店舗を借りる契約をし、数カ月以内に開店、という運びになったのだ。

 ところが、その店舗が一等地にあったことから、前に借りていた人が、期限が切れていたにも拘らず、なかなか明け渡してくれなかったのだ。そのため、トルコ青年はなんと、3年間も明け渡しを待つことになったのだ。

 そして先月、やっと渋谷店が開店した。それ以前には、横浜のレンガ街で、次いで十条に開店していたが、それなりに売れ行きは悪くなかった。しかし、渋谷店は彼が期待していたほどの、爆発的な売れ行きには、まだ至っていないようだ。

 周囲の飲食業の人たちが「8月は売れ行きが悪いんだ」と教えて、励ましてくれたということだ。

 彼の話を日本人の友人たちに話すと「よくまあ3年も我慢して待ったね」と感心する。確かにその通りだ。日本人の若者なら、半年も待たずに他の場所で商売を始めていたことだろう。彼が3年間も我慢したのは、渋谷のセンター街に45分入ったその店舗なら、絶対に成功すると信じたからだ。

 かつてのフランスの名優ジャン・ポール・ベルモンドを想わせる、笑顔の好青年メスットがその店のオーナーだ。渋谷にお立ち寄りのおりには、ぜひ励ましてあげて欲しい。彼は大の日本フアンでもあるのだから。

 同時に、日本の若者たちに、ぜひトルコ青年の粘り強さを、学んで欲しいものだ。