ムシャラフ大統領の辞任とその後のパキスタン

2008年8月20日

 ムシャラフ大統領が辞任した。その後に何が起こるのかを考えてみた。決して彼の辞任で、パキスタンが民主化に向かうとは思えない。彼は軍人の出身であり、軍がこれまで彼を支えてきたことは常識であろう。

 ムシャラフ大統領の後に出てくるのは、クーデターが起こらない限り、民間人であり欧米思考の人物か、あるいはイスラム色の強い人物、ということになろう。欧米思考の人物は、決して現在のパキスタンの中で、安定した政権を保っていけるとは思えない。

 それは、隣国アフガニスタンの情勢が、極めて不安定なことに起因しよう。もちろん、パキスタンそのものも、安定しているわけではない。これからパキスタンの内部の問題が、百出してくるという瀬戸際での、ムシャラフ大統領の辞任だったのだ。

 パキスタンとアフガニスタンの国境地域にある部族支配地域は、イスラム色が濃く、今後、彼らがパキスタン中央にまで、影響を及ぼしてこよう。インドとの緊張関係も緩んでいるわけではないし、カシミール問題も最近になって、きな臭くなってきている。

 イランに対するアメリカの軍事攻勢が噂されるなかで、パキスタンの南西部に位置するバルチスタン地域も、ムシャラフ大統領の辞任を機に、分離独立の動きに出てこよう。

 こうして考えてみると、今後のパキスタンはますます、混迷の淵に立たされるということであろう。こうした状況の中で、欧米思考の民主的大統領が、パキスタンを統治していくのは、至難の業であろう。もし民主化を語る人物が大統領になるのであれば、軍をどう引き付け、自分の指揮下におけるか、にかかっていよう。

 しかし、それは無理なのではないか。軍は独自の完成した機関であり、武力を持っていることから、一番不安定な状況の中では、国家を統一して行ける組織だからだ。そうであるとすれば、ムシャラフ大統領が辞任しても似たような、あるいは彼よりも独裁色の強い、人物が台頭してくるのではないか。その人物が民間人であれ軍人であれ。