イラクの石油生産は現在のところ、順調に増大している。イラク戦争前の段階の200万BDから、最近では250万BDに増え、数年で4000万BD,そして600万BDまで増産されるといわれている。
しかし、そうは言っても、イラクはいま戦後復興で、巨大な資金が必要であり、周辺諸国に散っているイラク人難民を受け入れ、彼らの生活基盤を確立してやらなければならない、という状況にある。したがって、石油生産増大によるメリットが、イラク全体を潤すには、まだ当分時間がかかる、ということだろう。
言ってみれば、イラクの台所事情は、いまだに改善の方向にはあるものの、改善されたわけではない。しかし、そのイラクに対して、クウエイトの大蔵大臣は、債務返済を執拗に迫っている。
クウエイトは歴史上に起こった自国の災難を、もう忘れたのだろうか?1990年に起こった湾岸危機と、その後の戦争は、クウエイトが1990年の3月にリヤドで開催された会議で、イラクに対し手ウイランイラク戦争時に貸し付けた資金の、債務返済を強要したことが、引き金となって起こったのだ。
いまのところ、イラクはクウエイトに対して、牙をむくことはなかろうが、将来的には起こりうることだ。クウエイトが現在の段階では、石油価格の高騰で十分潤っているわけだから、何も現段階でイラクに債務の返済を、求める必要はないように思えるのだが。
シェークスピアの名作「ベニスの商人」的なクウエイトの行動は、必ず将来クウエイトに不幸をもたらすだろう。アラブ人同士なら、アラブ人の復讐心がいかに強いかを、十分に分かっているだろうに。