トルコの将来を破滅に導く危険性を持った、憲法裁判所の与党AKP潰しが結果的に失敗した。
この問題の結果が出る前から、多分に憲法裁判所の裁判官たちの中にも、エルゲネコンのメンバーがいるだろう。したがって、最終的な段階では、憲法裁判所も、与党AKPに対して、強硬な措置を取れずに問題が解決しよう、と7月26日付けのこの欄で推測記事を紹介していた。
現地トルコで裁判所の出した結果を含めて、トルコ人に聞いたところ、推測通りだった。なんと私の推測では、憲法裁判所の裁判官11人のうち、エルゲネコンのメンバーは1-2名と思っていたのだが、実際に調査した結果分かったのは、8名だったということだ。
しかし、このうちの2名は事の重大さと、自身の保身のために、内務省に対し(AKP)自身がエルゲネコンのメンバーであることを打ち明け、罪一等を軽減してもらうように動いたというのだ。そのときに、他のメンバーの名前も、明かしたのであろう。
トルコ内務省(警察)は与党AKPと、ほぼ同一路線を採ってきていたが、トルコ軍の情報機関であるMITも、エルゲネコンの調査を進めてきており、今回、その全貌を明らかにしたということだ。したがって、これまでイスラム主義政党とされてきた、与党AKPに敵対的な立場を採ってきた軍部でさえも、エルゲネコン問題をキッカケに、与党AKP寄りに傾いたということだ。
結果的に、憲法裁判所の出した結論では、6名が与党AKP解散、4名が解散反対、1名が棄権というものだった。結果は実に公正な判断が、下されたように見える。
しかも、6対4という数字が意味するのは、憲法裁判所の当初の判断は、間違っていなかった。しかし、トルコ国内事情や国際世論の前に、ぎりぎりの妥協が示されたという形になっている。つまり、この結果は、憲法裁判所があくまでも、事案をリードした形になっているのだ。
だが、トルコの国民の間では、憲法裁判所の裁判官が、いかに汚辱にまみれ、悪辣なことをしていたかが、露見したわけであり、次回の憲法裁判所裁判官の交替時期には、ギュル大統領の指名する新裁判官指名に対し、大賛成することになろう。
問題は、こうした動きの結果、与党AKPが異常なまでに、権力を掌握することになるということだ。こうなると、誰も与党AKPに対して、ブレーキをかけることは出来なくなろう。まさに、与党の幹部とトルコ国民に自制と良識の維持を祈るのみだ。