グルジア紛争と米露土の関係

2008年8月17日

 既に、何人もの人が強調していることだが、グルジアでの戦いの火蓋を切ったのは、グルジアであってロシアではない。時間の経過と共に、次第にロシアが悪役に回り、グルジアは大国ロシアに攻め込まれた、かわいそうな小国というイメージが定着すると、全ての判断が狂って来る。

 では、グルジアは何故戦争を始めたのか、ということをめぐっては、アメリカが間抜けだったという説と、アメリカが仕掛けたという説とがある。

もちろん、小国グルジアがロシアの軍事攻勢を予測せずに、戦端を切ったとは思えない。グルジアの決定の裏には、アメリカのゴー・サインがあってのことであろう。

 そうなれば、アメリカは何らかの目的を持って、グルジアに戦端を切らせたということになろう。それはいうまでもなく、中央アジアのエネルギー問題であろう。現在、中央アジアの石油ガスはほとんどが、ロシアを経由して西欧諸国に輸出されており、このことから、中央アジア諸国はアメリカ寄りになりたくても、なかなかそうは舵を切れない状態にある。

 今回、グルジアがロシアと事を構えた結果、南オセーチアばかりではなく、グルジアやアブハジアに対しても、国連軍あるいはNATO軍が、平和維持のために駐留する口実が出来るかもしれない。これは、国連安保理がアメリカの支配下にあることは誰もが知っていることであり、意外に可能なのではないか。

 加えて、アメリカはグルジアに戦端を切らせた結果、ウクライナやバルト3国がCISからの離脱を主張し始め、実質的に旧ソ連東欧圏に対する、ロシアの強い主導力の壁を、壊すことに成功したのではないか。

 そのことは、中央アジア諸国にとっても、ロシアに対する脅威が緩むことを、意味しているのではないか。

そうなれば、カザフスタンが細々とはじめたトルコ中心の、BTCパイプ・ライン(アゼルバイジャンのバクーとグルジアのチブリシとトルコのジェイハンを繋ぐパイプ・ライン)を使った西側市場へのロシアを経由しない石油の輸出が、もっと本格的なものになっていくのではないか。

 ロシアがグルジアの出方に対し、強硬策を採らざるを得なかったのは、グルジアを意識してというよりは、中央アジア諸国をより意識してではないか。グルジアの動きを放置すれば、中央アジア諸国もロシアに対し、自由な行動をとり始める危険性があるからだ。

 今回のグルジアとロシアとの紛争は、早期に終息する見通しだが、今後も再燃する危険性を含んでいよう。そうであるとすれば、アメリカは早急に平和維持軍を送り込むことを、安保理やNATOで決議するのではないか。

 そもそものことの起こりは、トルコが提唱して推進した、BTCに原因があろう。このBTCはそれだけロシアと世界にとって、重要なプロジェクトだったということだ。