イラン返答の期限は切れた

2008年8月 2日

 7月中旬に、スイスのジュネーブで開催された、イランの核をめぐる会議の後、アメリカは2週間を、イラン側が返答に与えられた、猶予期間だとしていた。それが8月2日で終わった。

 述べるまでも無く、アメリカは声を強くして、イランに最終返答を出すよう、圧力をかけてきた。しかし、イラン側は返答に期限はついていなかったとして、アメリカの要求に早急には、応えるつもりは無いと言っている。

 ヨーロッパ諸国も、イラン側から返答がでることを、あまり急いでいる様子は無い。それどころか、ドイツはイランの注文した、ガスの液化プラントを受注している。これは、ドイツ国内で組み立てられ、イランに納品するのだから、投資ではないから違反ではないと主張している。

アメリカにとっては、このドイツの動きが、非常に不愉快なものとなっていよう。つまり、ドイツは制裁が強化されようとしているイランに対し、正常な取引を行っているからだ。

 こうした状況下で、アメリカ国内ではイランをめぐる、意見の対立が少しずつ弱まっているのかもしれない。同時に、イスラエルの強硬派と目される人たちの間からは、アメリカに対し、イスラエルにイラン攻撃を許可するよう、求める動きが活発化してきている。

 レバノンやシリアについても、イスラエルがイランに対し攻撃するとなれば、戦争の準備をする必要があろう。レバノンのヘズブラは、最新型のミサイルを含め、この前の戦争時よりも、兵器を多く所有し、イスラエルにとって、より手ごわい相手になっているようだ。

シリアはトルコの仲介により、イスラエルとの和平交渉を続けてはいるが、いまだにトルコを介した、間接的な対話の状態を維持しており、平和実現に向けた、シリア・イスラエル間の、明確な進展は見られない。

イスラエルのあせりは、オルメルト首相の辞任決定を受け、より一層強まったのではないか。そうなると、次の首相の座を狙う者は、イスラエル国民や周辺諸国を意識して、より強硬な発言をすることになろう。

カデマ党のなかでは、リブニ外相がオルメルトの後任候補として、モファズ運輸相よりも、支持が高まっているようだ。しかし、リクード党の最強硬派である、ネタニヤフ元首相に対する支持が、イスラエル国民の間で広がっている。

イスラエルとイラン、アメリカとイランの緊張状態は、日に日に高まっているようだ。そうした緊張状態のなかで、トルコだけがイランに対し、影響力を持ちうる国家であることを考えると、トルコの与党AKPが憲法裁判所によって、解党を命じられなかったことは、唯一の救いであろう。

そのトルコを訪問し、今後もイランとの話し合いを、継続していくよう、トルコの要人たちに働きかけてくるつもりだ。対話が途切れたときが、一番危険になるのだから。