サダム体制がアメリカによって打倒された後、ほとんどのバアス党員は公職から追放されていた。なかでもサダム体制時代に、インテリジェンスの仕事に携わっていたバアス党メンバーは、公職への復帰が困難だった。しかし、最近になって、実質的に復帰し始めている。
アメリカ軍がイラクに軍事侵攻し、サダム体制を打倒した後、バアス党員はほとんどが公職から追放され、ある者はリンチに逢い、死亡するという悲劇も頻発していた。
以前に、在日大使を務めていたあるイラク人は、幸運にもバアス党員であったにも拘らず、サダム体制が打倒された後も、外務省に留まることができたが、帰国したバグダッドでは、彼に対する暗殺の警告が何度もあり、しばらくの間、ヨルダンのアンマンに身を隠し、その後にある国の大使として赴任している。
彼はまさに例外的な幸運に恵まれ人物であろう。アメリカのイラク統治のトップが、サダム体制打倒後にバアス党員を追放し、軍隊も解除したために、イラクの治安が何時までも混乱していたという反省から、バアス党員も公職に復帰させよう、という考えが現政府内部と、アメリカ側から今年の2月に出てきた結果だ。
現在では、数千人が公職に復帰しているようだが、そのなかには123人の元インテリジェンス職員も含まれており、公職に復帰しているということだ。軍事部門のインテリジェンスも、71人が公職に復帰し,サダム・フェダイーン(サダム・フセイン大統領の特別警護隊員)のメンバーでさえ、今では23人が公職に復帰したということだ。
これは今後、イラク内部をまとめていく上で、非常にいい決定だと思われる。バアス党員のなかには、非常に優秀な人材が沢山いた。それを単にバアス党員であることから、公職に復帰させないということは、イラクにとって人材を無駄にすることであろう。
バアス党員は、人種宗教宗派にかわらず、イラク国民が一体となって、国家に貢献していくことを、目的としていたのだ。ただサダム体制下では、バアス党員イコール、サダムの信奉者という感じがあったことは事実だ。
しかし、それも優秀な人材たちが,サダム体制下で出世するために、そうしたに過ぎない場合が多かったものと思われる。何もサダム・フセイン大統領を、心から信奉していた人たちばかりではないのだ。
今回の措置で、バアス党員が新生イラク政府に奉職することは、今後のイラク国内の安定と、現在ではマイノリテイの弱者の立場に回っている、スンニー派国民が、胸を張って生きていくうえでも、必要な措置であったろう。
バアス党員の公職への復帰決定は遅かったが、それでも今回のような変更があったことは、イラクの安定にとって、大きな前進といえよう。