憲法裁判所はトルコ与党を解党せず

2008年8月 1日

 トルコの憲法裁判所が、与党AKPを解散させるのではないか、と懸念されていたが、結果は、政党交付金を半額に減らすなどの、軽いペナルテイだけで許した。それはこれまでも述べてきたように、AKPの国民からの支持が強かったことが、原因のひとつであろう。

 加えて、せっかくAKPが進めてきた経済改革が破綻し、トルコの経済が破滅的な状態になることを、憲法裁判所も懸念したからであろう。加えて、AKPの率いるトルコに、信頼を寄せているアメリカやEU諸国の立場も、影響したものと思われる。

 そして、もうひとつの原因は、AKPがエルゲネコン緒調査を徹底し、逮捕者を出したことにあろう。このエルゲネコンなる影の権力集団には、あらゆる分野の指導的立場の人たちが加わっていた。学者、政治家、軍人、ビジネスマン、ジャーナリストそしてマフィアもだ。

 多分に、エルゲネコンのなかに、法曹界の人間もいたものと思われる。つまり、AKPはエルゲネコンを追求することにより、国民の前にエルゲネコンなる組織が、どのようなことをしてきたのかを暴き、同時に、そのメンバーを段階的に明かしていくことによって、エルゲネコンとそれに繋がるメンバーを、追い込んでいったということだ。

 これでは、法曹界の人たちも、自分たちの仲間のなかに、エルゲネコンのメンバーがいることが、明らかになるのは時間の問題だ、と考えたものと思われる。もし、法曹界の人たちと、エルゲネコンとの関係が明らかにされれば、彼らの社会的生命は、終わることになろう。

 今回の憲法裁判所、検察とAKPとの闘いでは、AKPの作戦勝ちだったということであろう。トルコ国民を味方につけ、アメリカやEUを味方につけることによって外堀を生め、最終的には、法曹界のメンバーまでも徹底して、エルゲネコンとの関係を調べたのであろう。

 AKPの動きで分かったことは、まず内務省警察が、完全にAKP側についていたということ。次いで軍内部に亀裂を作り、相当数の幹部がAKPについたということだ。

 今後、AKPは自信を持って、トルコ国内政治を展開していくものと思われるが、それだけではなく、中東地域の問題解決にも、本格的に乗り出していくものと思われる。そのことは、アメリカやEUに対し、トルコとの協力が最終的には、中東地域の安定のために最もいい選択だ、と思わせることになるのではないか。

 そのひとつとして、何とかトルコに、イランとアメリカとの軍事緊張関係を、解決して欲しいものだ。たとえ、アメリカの攻撃が恫喝だけだとしても、世界経済に与えるダメージは、計り知れないものになる危険性が多分にあるからだ。