ラマダンを機にM・バルグーテイの釈放なるか

2008年8月31日

 

 ヨルダン川西岸地区で、もっとも政治的に著名な活動家、マルワーン・バルグーテイ氏がイスラエルの刑務所から、釈放される可能性が出てきた。彼はイスラエル人とギリシャ人司祭の殺害に、関与したという名目で、5生(5回の一生分の期間)の受刑を、裁判で言い渡され受刑中だ。

 その彼が、イスラエルの刑務所から出されるということは、パレスチナ人社会と政治に大、きな影響を及ぼす可能性がある。彼はマハムード・アッバース議長が所属する、ファタハのメンバーでもあり、ファタハ内部パレスチナ自治政府内部での、政治力学にも影響が及ぶものと思われる。

 今回のイスラエル政府とパレスチナ自治政府との交渉は、アナポリス会議の合意に基づいて進められるもので、マルワーン・バルグーテイ氏を含む、治安に関与する450人の受刑者が釈放される予定だ。この動きは、ブッシュ大統領が1月に退任する前に、なんらかの進展を生み出したいという、イスラエル政府とパレスチナ自治政府の意向による。

 それ以外にも、イスラエルとパレスチナ自治政府との間では、人質になっているイスラエル兵シャリト氏の釈放と交換に、パレスチナ受刑者を釈放するという意味合いもある、。つまり、この釈放は双方にとって、必要なものであるということだ。

 パレスチナ自治政府側は、イスラエル政府側から出てきた今回の釈放について、450人ではなく1000人の釈放を要求しているようだ。パレ自治政府側は女性、未成年者、年配者、病人の釈放も、含まれているからだということだ。そこには、ハマースとイスラエル政府とが、直接交渉をすることを、なんとしても抑えたいという、パレスチナ自治政府の意向もあろう。

 今回のイスラエル側の動きは、ラマダンの始まりに寄せたものであり,イスラム教徒のパレスチナ人の心理を、ついたものであろう。この機会に、パレスチナ自治政府は何とか、入植の停止、エルサレムのPLO研究所の再開、IDF(イスラエル軍)のチェックポイントの撤去、追放されたパレスチナ人の帰還なども、実現したいと考えている。

 イスラエル政府がパレスチナ解放闘争の大物である、マルワーン・バルグーテイ氏の釈放を口にし始めたのには、それなりの理由があろう。つまり、オルメルト首相やリブニ外相らイスラエル政府側に、パレスチナとの間に平和な関係を構築していきたいという、意志を伝えることに目的があるのではないか。

 それは同時に、イスラエル国民に対してのアピールでもあろう。もし、このままの状態でイスラエル国内が選挙に向かえば、イスラエル国民は不安の中で、より強硬な政党や政治家を支持する、危険性が出てきているからであろう。したがって、イスラエル政府の今回の新方針は、実に重要な意味合いを持っているということだ。