溺れる犬に石を投げるようなスーダン状況

2008年7月29日

 スーダンのオマル・バシール大統領が、国際司法裁判所から、虐殺の犯罪人として起訴されている。現職の大統領が国際司法裁判所から、起訴されるというケースは、今まで無かったらしい。

 そうであるとすれば、相当の悪人ということになるのだが、どうも実感がわかない。それは、スーダン人に対して私が持っている、先入観によるものかもしれない、スーダン人には温厚で、親切な人たちが多いのだ。

 しかし、今回の場合、彼はダルフールの近くの町に軍隊を送り、虐殺を命令したというのだ。しかし、その犠牲者は伝えられるところによれば、数人程度ということであり、虐殺というほどの人数では、無いような気がするのだが。

 もし、これまでのダルフールでの戦闘の犠牲者や、難民の犠牲者を含めるのであれば、数万あるいは数十万人ということになろうが、それは何もバシール大統領だけを、悪人にするというわけには行くまい。それを言うのであれば、ブッシュ大統領はイラクに侵攻し、既に100万人を越える犠牲者を生み出しているのだ。

 そうした国際司法裁判所の動きを見てか、来年スーダンで予定されている大統領選挙には、現在の段階から数人が、立候補を口にし始めている。一人はサルファ・キル氏で、彼はスーダン人民解放運動のリーダーだ。

 もう一人はオマル・バシール大統領の側近であろう、現職の副大統領だというのだ。

 スーダン人民解放運動は、来年の選挙前には、ダルフール問題を解決したいと考えており、スーダンが安定した状態のなかで、全土を挙げて選挙を実施したいということであろう。そのためには、オマル・バシール大統領が国際司法裁判所によって、逮捕される必要があるということであろう。

 この話しが現実的だとすれば、オマル・バシール大統領が率いるスーダンの与党国民会議のなかにも、オマル・バシール大統領と異なる意見を持った者が、複数いるということであろうし、他の野党も、この構想を支持しているということであろう。

 こうしたスーダン内部の動きと、国際司法裁判所の追及を前に、オマル・バシール大統領はリビアのカダフィ大佐に、相談を持ちかけているが、場合によっては、リビアへの亡命を考えているかもしれない。

加えて、オマル・バシール大統領はトルコで開催される、アフリカ会議にも出席する予定だということだ。まさに、藁をもつかむ心境なのであろう。このほかにも、サウジアラビアのアブドッラー国王と、エジプトのムバーラク大統領に親書を送ってもいる。

つまり、オマル・バシール大統領は、国際司法裁判所の動きが、早まったと受け止めているのであろう。では何故いまの段階になって、バシール大統領外しが急速に進み始めたのであろうか。それについては、7月中旬に書いた「中東TODAYNO・1074」をご覧いただきたい。