イラン脅威論を否定し始めたイスラエルの真意

2008年7月27日

 イスラエルはいままで、イランを脅威と感じ、イランが開発するであろう核兵器を、未然に防ぐための空爆が、必要であることを強調してきた。盟友のアメリカに対しても、イランの核施設破壊を、何度も呼びかけてきている。

 しかし、ここに来てイスラエルは、イランが脅威ではないという発言を、し始めている。第一に、イランがロシアからS-300ミサイルを入手するのは、一部は9月に届くが、残りは年末だとみている。

 これに対して、アメリカはS-300のロシアからイランへの移送は、来年になるだろうと見ているようだ。そうなると、アメリカもイスラエルも、イランに対する軍事行動は、当分採らなくていい、ということになるのだが。

 イスラエルはイランのミサイルについて、撃墜できるとも主張している。イランに対して、現時点で攻撃を加えることは、場合によっては、レバノンのヘズブラやシリアを刺激し、戦域を拡大しかねない。したがって、イラン攻撃は最終的な手段として、とっておくべきだと主張する者も出てきている。

 ここ数週間の間、あるいは数日間の間に、イスラエル国内の意見がこうもトーン・ダウンしたのはなぜだろうか。イスラエルはイランがウラニュームの濃縮に使われる遠心分離機を、6000基に増加したという主張に対しても、アハマド・ネジャド大統領が大げさに言ったのだと切り捨てている。

先日行われた長距離ミサイルの発射実験についても、画像に手が加えられたものであり、数秒間以内の連射は嘘であり、ビデオ映像は本物ではないとも主張している。

しかし、このイスラエルとアメリカの豹変を、そのまま信じていいのだろうか。案外イランを油断させるための罠かもしれない。イランは前にも書いたとおり、「攻撃無し論者」と「攻撃されても勝つ論者」に分かれており、いたって呑気に構えている部分があるからだ。世の中それほど甘くはないと思うのだが。