シリア訪米団長のキャンセルは何を意味するのか

2008年7月24日

 今週中に、シリアの代表団がアメリカを訪問し、国務省の高官らとゴラン高原問題などを、話し合う予定になっていた。

 このため、シリアの訪米代表団の団長には、ゴラン高原の交渉トップが選ばれていた。彼の名はリヤード・ダウーデイ氏で、イスラエルとのゴラン高原交渉のシリア側最高責任者であり、外務省のアドバイザーでもある。

しかし、彼の訪米は突然キャンセルされ、彼の後任団長には、シリア首相のアドバイザーであるアハマド・ターキ氏が就いた。

アメリカ側は今回のシリアの訪米団を重視し、国務省のデービッド・ウエルチ国務次官補が対応することになっていた。しかし、シリア側の団長の交代により、デービッド・ウエルチ氏との会談は、キャンセル可能性が高くなり、しかるべき国務省の高官が、これに当たることになりそうだ。

アメリカ側としては、アメリカのシリア・イスラエル問題に対する姿勢を、明確にシリア側に対して、説明するつもりのようだ。

シリア側の団長に予定されていた、リヤード・ダウーデイ氏の突然の訪米キャンセルは、シリア・イラン関係にあるようだ。つまり、アメリカ側はアラブ諸国に対して、イランとの関係を断絶するよう、圧力をかけており、シリアはそれに明確な答えを、出したくないからではないかと思われる。

イランとアメリカとの関係が、日に日に緊張を高めているなかで、シリアに対するイスラエルの先制攻撃が、予測されることも一因であろう。シリアとすれば、イランとの関係を絶つことにより、イスラエルとの緊張関係に終止符を打ちたいと思う反面、そのことが結果的に、イランの後押しを期待できなくなり、国内の反体制派の巻き返しに会う危険性もあろう。

シリアはいま、非常に難しい状況に、追い込まれているということではないか。トルコの仲介によるイスラエルとの和平交渉も、継続されてはいるが、相変わらず間接交渉の段階から、抜け切れないでいる。シリアの国内政治には、レバノンやイラン、パレスチナといった、複雑な要素が絡んでいるのだ。

いずれにしろ、シリアは次第に危険の淵に、立ち始めているのではないか。イランに対する軍事攻撃が、実際に起こるとすれば、シリアは確実に先制攻撃を、受けることになるからだ。