アメリカが戦争を始めるには

2008年7月21日

 最近、気になっていることがある。それは、「アメリカがイランに対して、戦争を仕掛けないだろう。」という予測をしている人たちの多くが、その理由にアメリカの経済状態が、悪いことを挙げている。

 もうひとつの理由は、「アメリカがイラクとアフガニスタンとで戦っている状態で、三つ目の戦争を始めるはずがない。」という予測だ。それを言うなら、最初のアフガニスタン戦争が、完全な勝利に至っていないのに、イラクとの戦争を始めたのも辻褄が合わなくなる。

 これまでの歴史を振り返ってみると、幾つもの国が、ほとんど破滅的な経済状態のなかで、戦争を始めたというケースは、幾らでもある。第四次中東戦争を始めたときのエジプトは、まさにそれであろう。

当時の日本大使は、日本人特派員たちに対して「こんな貧乏国が戦争を始めるわけがないだろう」と言った次の日に戦争が始まった、というジョークとも思える実際の話は有名だ。

大東亜戦争を始めたときの日本も、決して経済的に余裕があったわけでは、なかったのではないか。つまり、一国が戦争を決意するのは、その必要を強く感じた結果であって、決して経済的余裕からではないはずだ。

したがって、現在のアメリカの経済は疲弊しているから、アメリカがイランを攻撃しないだろう、という予測はすべきではなかろう。

アメリカは現在、アフガニスタンとイラクで、二つの戦争を同時に遂行しているから、三つ目の戦争を始めることはないという予測も、必ずしも正しくないのではないか。

戦争には色々なパターンがある。日本がやる全面戦争、つまり自滅型戦争もあれば、双方がある程度相手を攻撃して、話し合いに入る交渉の糸口を作るための戦争、恫喝のための戦争、相手に経済的損失を与えるための戦争など、戦争には色々の種類と、その目的があるのだ。

アメリカがイランを攻撃するとすれば、空爆に限定されたものである可能性が極めて高いだろう。イラン領土内に何十万人もの陸軍を送り込んで、陸上戦闘を展開することはあるまい。

アメリカはいま、イラクとの国境アフワーズと、アゼルバイジャン側と、バルチスタン側から、破壊工作を行っているものと思われるが、それに加え、イラン国民に大きなショックを与える、空爆を行うことによって、イラン国民に体制打倒を促すという作戦もあろう。

戦争を始めるのは、財布を見てから、ということは正しい判断ではなかろう。そして、いまアメリカ軍に足りないのは、陸上戦闘用の兵士であって、空軍や海軍ではないことを忘れてはなるまい。