イランのムッタキ外相が、オマーン、シリア、トルコの歴訪に、16日出発した。オマーンではイランの核と、イラク問題が主な討議テーマであり、シリアではゴラン高原奪還の相談、そして、トルコではイランの核問題が、話し合われる予定だ。
そこで、この時期にイランのムッタキ外相が、何故これら3カ国を歴訪するのかということになるが、これは実に計算された歴訪ではないかと思われる。
オマーンはインド洋に面し、しかも、ホルムズ海峡に面した、アラビア半島の突端に飛び地を持つ、アラビア半島の一国だ。
しかも、同国はイエメンとズファール紛争があった次期に、イランと非常に友好的な関係を維持していた。当時、イランはオマーンに対し、軍事支援をしていたという経緯がある。
しかし、最近では、オマーンはアメリカの艦隊に対し、自国の港湾の利用を許可し、食料や水の供給をしている国でもある。したがって、オマーンへの訪問は、アメリカ軍の動きに関する、相談であるものと思われる。
オマーンの次の訪問国であるシリアは、イランと長い間きわめて良好な関係にある国だ。イランはシリアを通じて、レバノンのヘズブラに、資金や兵器を供給してもいる。
そのシリアが、トルコの仲介でイスラエルとの、和平を模索し始めると、シリアとイランとの関係が、悪化するという懸念が、イランの国内から起こっている。シリアでのムッタキ外相の対話のテーマは、ゴラン高原の奪還ということだ。
ムッタキ外相の意味するところは、シリアに対して、イスラエルとの軍事緊張がなくなったわけではない、そのことを考えた上で行動しろ、というシリアに対するイスラエルとの関係での、ブレーキをかけに行くものと思われる。
そして、最後の訪問国であるトルコに対しては、イランの核問題を話し合う予定になっている。これはまさに、イランとアメリカとの核をめぐる緊張を、緩和するために、トルコに対して種々の説明を行い、加えて仲介を再度依頼することに目的があるものと思われる。
ムッタキ外相の3カ国歴訪と、各国での対話の話題は、いずれも、現在のイランが直面している、緊急課題に直結している。つまり、イランがいかに緊張した状態にあり、真剣に対応を考えているかを示しているものであろう。