ギュル大統領は先月、TNT(トルコ国営テレビ放送局)に対し、クルド語での放送を許可した。同時にアラビア語ペルシャ語放送も許可している。
このギュル大統領の決定は、トルコのクルド住民から歓迎されている。トルコ国内には、2000万人以上のクルド人が居住しているが、これまでクルド語の使用、クルド文化の継承については、厳しい規制が存在した。
これまでのトルコ政府は、トルコの統一を維持する上で、クルド語の使用やクルドの文化活動を許可することは、危険だと判断していたからだ。しかし、現在の与党AKP(開発公正党)は、クルド人の言語や文化を認めることで、クルド人との対立関係を緩和できる、と判断しているようだ。
その上では、テレビ局がクルド語の放送を開始するということは、画期的な出来事であろう。既にクルドの文化人の間からは、大人向けの番組ばかりではなく、子供向けの番組も放送して欲しい、という要望が出ている。
トルコ政府がクルド語の放送を開始するには、クルド人との対立解消の上で、好都合であろう。現在トルコに攻撃をかけ、クルド人の分離独立要求運動を展開しているPKKが、デンマークからクルド語のテレビ放送(ROITV)をしているのだ。
今回のギュル大統領の決定により、トルコでクルド語放送が開始すれば、PKKのトルコ国内クルド人に対する、影響は低下するものと思われる。このギュル大統領の決定の前には、今年の3月に、エルドアン首相が、ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューのなかで、トルコ政府にはクルド語放送を、始める意思があることを明かしていた。それが具体化したということだ。
このクルド語放送が具体化したことは、次の段階の、クルド人に自治を与えるということも、近い将来、具体化するのではないか。その上では、PKKとの平和的な関係も、生まれてくるのではないか。トルコ政府は将来的には、PKKを政党として認める、可能性もあるということだ。