エルドアン首相のイラク訪問は大成功

2008年7月12日

 トルコのエルドアン首相がイラクを訪問し、マリキー首相と両国関係を討議した。その結果、両国は貿易、水、治安、エネルギー面で協力することを合意した。

 その上で、エルドアン首相はトルコとイラクが、共同でPKK問題を解決していくことにも、合意したことを明らかにした。つまり、トルコとイラクは、PKKを両国の健全な関係拡大にとって、共通の敵であることに、意見が一致したということだ。

 したがって、PKKは今後、イラクからのトルコへの越境攻撃は、非常に困難になるということだ。

 このトルコとイラクの合意は、何を意味しているのだろうか。これはトルコにとって、非常に意味の深いものであると同時に、イラクにとっても、非常に意味のあることであろう。

 最近になって、イランはイラクでの、テロ活動支援の手を緩めつつある。イランはイラクの国内状況を、安定化させることが、結果的にアメリカを早期に、イラクから撤退せざるを得ない状況に、追い込むと判断しているようだ。

 そうなれば、イラク国内は安定化に向かい、イラクでのビジネスチャンスは、拡大するということになる。そこに、トルコがイラクに進出する、チャンスがあるということだ。トルコはイラクのクルド地区の開発に、大きく貢献しているだけに、イラクの他の地域でも、トルコに対する期待が少なくなかろう。

 イラクにとっては、アメリカに何時までも居座られるのは迷惑な話だが、アメリカに代わる、安定の重石になる国家が必要でもある。イラクにしてみれば、トルコは安全なイラク安定化に貢献する、国家なのかもしれない。

 トルコがイラクにとって、安定化に役立つとなれば、マリキー首相はアメリカに対し、強気の交渉が出来るようになろう。イランにとっても、アメリカが駐留軍を削減していき、結果的に全面撤退してくれるのであれば、トルコのイラクへの台頭は、歓迎すべきことであろう。

 イラク、トルコ、イランの間で合意はしていないとしても、お互いに利用しあいながら、イラクでのアメリカの影響力を削減していくという、共通の考えがあっても不思議ではない。

 アメリカはこうしたイラク周辺諸国の、新しい動きのなかで、次第に立場が苦しくなっていくのではないか。それでも、アメリカが自国軍を地域支配のために、イラクに強引に駐留させ続けるとすれば、イラク国民の抵抗は激化し、かつ長期化することになろう。