イランがシェハーブ3型という、長距離ミサイルの発射事件を行ったことが、日本では取り立ててニュースになっていないが、欧米諸国の間では大きな反響を呼んでいる。
それは、シェハーブ3型ミサイルが、2000キロの射程を持っているからだ。この距離は、イスラエルの地中海に面した海岸都市、テルアビブに優に届き、エジプトのカイロ、トルコのイスタンブール、ギリシャのアテネ、インドのニューデリーにまで到達するものだ。
しかも、シェハーブ3型ミサイルは、1トンの重さの弾頭を搭載することが出来るというのだ。つまり、1トンの化学兵器も爆薬も、細菌兵器も搭載できるものであり、当然のことながら、核弾頭も搭載できるものなのだ。
イスラエルやアメリカ、ヨーロッパ諸国は、イランが核兵器を製造する方向に向かっている、という疑惑を捨てていないし、イランの核兵器開発を、未然に防ぐために、イランの核施設に攻撃を加えようとも考えている。
そうした緊張状態のなかにあって、イランが長距離のミサイル発射を実験したことは、欧米諸国をますます警戒させる結果となっている。その結果は、欧米諸国とイスラエルが、イランに対する攻撃を、早い時期に実施する危険性すら、出てきているということなのだ。
しかも、イランが今回行った実験で、見逃してならないのは、最初のミサイルが発射された後、次のミサイルが発射されるのに、数秒しかかかっていなかったということだ。このことは、ミサイル発射が何処から行われたかを、確認する上で問題になるのだ。
以前のように、最初のミサイルが発射されてから、第二弾のミサイルが発射されるまでに、しかるべき時間がかかれば、その最初の発射位置に対して、攻撃を加えることが出来、二発目のミサイル発射を、阻止することが出来るのだ。
以前、イラクはミサイル発射に、発射台にミサイルを載せ、液体燃料を詰め込むのに、8時間程度かかったといわれている。当然のことながら、これではすぐに敵に、ミサイルの発射位置がばれてしまい、反撃されることになる。
ミサイルの発射が間髪いれずに、連続して行えるということの、メリットはそこにあるのだ。しかも、このことに加え、シェハーブ3型ミサイルは、移動式になっているようだ。そうなると、ますます発射位置の確認が、困難になるということであろう。
しかし、このミサイルの命中精度が低いことから、海上に浮かぶ艦艇に命中させるのは、困難だということだ。そうは言っても、イランがアメリカやイスラエルと戦争状態になり、ミサイルを発射するとすれば、イスラエルではテルアビブが狙われ、アメリカ側はクウエイトやカタール、バハレーンにあるアメリカ軍基地が狙われるであろうから、命中精度はあまり意味がなくなるだろう。
イランのシェハーブ3型ミサイルの発射実験は、こうしたことから、アメリカに異常なまでの、警戒感を抱かせることになったのだ。それがもし、イラン側がアメリカ側から妥協を引き出すために、駆け引きの道具として行った、ぎりぎりの恫喝行為であるとすれば、結果は、全くイランの期待とは、異なるものになるかもしれない。