アメリカとイスラエルのイランをめぐるキャッチボール

2008年7月 7日

 イスラエルとアメリカが、イランに対する対応をめぐり、不自然な中傷とも言える、言葉の応酬をしている。

 アメリカはイスラエルに対して、アメリカの協力無しには、イスラエルはイランを攻撃することが出来ないし、出来たとしても、その後にイスラエルは危険な状況に追い込まれよう、イスラエルはイランのしかるべきターゲットを、破壊することは出来まいというのだ。

 他方、イスラエルはアメリカが持っている、イランに関する情報と分析は正しくないとし、アメリカがイラン攻撃に、怖気づいたといった、ニュアンスの言葉を向けている。

 こうした言葉の応酬は、お互いに挑発することにより、イランに手を出させるつもりではないのか、と思えるフシもある。つまり、アメリカはイスラエルの能力を過小評価することによって、イスラエルをイラン攻撃に向かわせ、イラン攻撃の責任を、イスラエルに持たせることによって、アメリカがやむなく参戦したという形にする。

 イスラエルもまた、アメリカを挑発することによって、アメリカがイランに対する攻撃を、イスラエルよりも先に行わせよう、としているのかもしれない。

 イスラエルにしてみれば、イランが今年末には、核弾頭を製造できるだけの、濃縮ウランを持つ危険性を強く感じており、何とかアメリカを巻き込んで、イランを攻撃したいということであろう。

 イスラエルが単独で、イラン攻撃をするとすれば、イラクの上空を通過して行うのが、最も安全かつ短距離であることから、イラク上空を通過するルートを、採るものと思われる。しかし、その場合、イラクの制空権を握っているのはアメリカであり、アメリカの事前許可なしには、出来ないことであろう。

 アメリカにしてみれば、三つ目の戦線を開くことは、経済的にも戦略的にもリスクは大きい。したがって、ゲイツ国防長官やライス国務長官は、何とかイラン攻撃を避けたいと考えているのであろう。

しかし、誤解してならないのは、二人が平和主義者だから、イラン攻撃に反対しているのではないということだ。彼らもリスクがなければ、イランを攻撃したいと考えていると、認識すべきであろう。二人はあくまでも、自国の利益を優先しての考えなのだ。

イラン攻撃が起これば、石油価格は140ドル台から、一気に300ドル台に上がることが、多くの石油専門家によって予測されている。それは、多くの国々が経済的に、破綻するということでもある。

こうしたことから、アメリカもイスラエルも、イランを攻撃したい意向を持ちながらも、世界に対する攻撃の正当な説明が出来る状態を、準備しているのかもしれない。