アメリカが望む、イラクでの長期駐留を正当化するための、地位協定交渉が続いているが、どうもアメリカが考えているような、タイム・テーブルでは進んでいないようだ。
アメリカは当初、7月中の調印を希望していたようだが、ここに来て、今年中の合意も不可能ではないか、という悲観的な予測が、イラクのズイバリ外相や、アメリカ軍幹部の間から漏れてきている。
アメリカ側が、出来るだけ早い協定調印を望むのは、アメリカ軍のイラク駐留に対する正当性が、今年12月31日で期限切れになるからだ。この期限は国連によって決められたものであり、その期限が切れれば、アメリカ軍のイラク駐留は、侵入軍同様の非合法なものになるのだ。
しかし、イラクの国会議員たちは、イラクがアメリカとの間で、長期駐留を認める地位協定に調印すれば、アメリカ軍は永久にイラクに駐留し、軍事支配をすると懸念している。
同時に、イラクの議員を含む国民のほとんどは、アメリカとの地位協定が、イラクを周辺諸国に対する、アメリカ軍の軍事攻撃の基地にすることに、繋がることを懸念している。そうなれば、イラクは常に戦争に巻き込まれる、不安にさらされることになるのだ。
イラクとアメリカの地位協定が結ばれるためには、アメリカは日本でうまく行っている、勝手な行動が許されることが、イラクでも通用するとは考えないことだ。日本では結果的には許される強姦も、イラクでは部族全員による報復が待っているのだ。
名誉を重んじるイラクの男たちは、自分の命をかけてでも報復してこよう。そのことの恐ろしさを十分に考慮し、アメリカ人に都合にいい地位協定を結ぶことは、始めから望むべきではないだろう。その意味では、日本が交わした合意は、イラクには全く当てはまらないのかもしれない。