トルコの軍には、社会が世俗から逸脱して行くような場合は、クーデターを起こし、ケマル・アタチュルクの打ち立てた、世俗国家トルコを守る権利が、憲法で認められていることは、何度か指摘した。
しかし、AKPが与党の座に就くと、状況は一変したようだ。軍部がクーデターを起こしたくても、出来なくなったのだ。それは、軍部のクーデターに対して、欧米が賛成しないことと、国民の圧倒的支持が、AKPに寄せられているからだ。
そこで、軍部と野党の勢力が一体となって、100万人集会を行ったが、これはやらせであることが誰にも分かり、与党AKPを追い込むにはいたらなかった。AKPの強みは、経済が好転していることに、最大の理由があるのかもしれない。
そこで、軍部は憲法裁判所と結託して、AKPは憲法違反であるとし、近く検事側とAKP側の提出する書類をもとに、判断を下すことになっていた。この場、合憲法裁判所は当然のこととして、AKPに解党を命ずる判決を、下すものと思われる。
しかし、ここでも国民のAKPに対する支持が、大きく響いてきている。先の選挙で47パーセントを得票したAKPに対する、国民の支持が憲法裁判所との抗争のなかで、53・3パーセントに上がったのだ。
これに気を強くしたのであろうか、AKPが内務省に指示したのであろうか、4人の退役軍人を始め、アンカラの商工会議所会頭などのメンバーによる、クーデター計画があるとして逮捕したのだ。
現段階で逮捕者の数は、数十人に上るようだが、この逮捕劇のなかで、トルコの影の組織、エルゲネコンが表面に出でてきたのだ。この組織は非合法の影の組織として、トルコ人の間ではよく知られてきたが、これまではアンタッチャブルな組織として、誰も手を付けようとはしなかった。
一説によれば、彼らがこれまで、数々の政変を計画し、経済を影で牛耳ることを実行してきたということだ。そのエルゲネコンを、今回は完全に洗い出し、白日の下にさらすかもしれない。そうなれば、エルゲネコンのメンバーが誰なのかが、国民の知るところとなろう。
そのなかには、政治家はもとより、憲法裁判所の判事、裁判官から、大学教授、著名なジャーナリストにビジネス界の大物までもが、含まれているであろう。つまり、今回のクーデター計画者の逮捕劇は、トルコを完全に新しいものにするかもしれない、与党AKPによる逆クーデター、あるいは革命とも呼べるものかもしれない。
もちろん、AKPの敵側、相当な力でこれに、反撃してくることが予想される。トルコはいま、生まれ変わろうとしているのであろう。