ここに来て急に、アメリカのイラン攻撃が、現実味を持って、伝えられるようになってきている。そのキッカケのひとつは、セイモア・ハーシュのニューヨーカー誌に掲載された原稿だ。
彼の原稿によれば、アメリカ政府は400億円を、イランの内部かく乱工作に充てたということだ。その費用は述べるまでもない、国外にいる反体制イラン人の活動支援金であり、アメリカの工作員のイラン侵入に伴う、破壊工作の費用だ。
同時に、イランの革命防衛隊のトップであるムハンマド・アリー・ジャアファリ将軍が、もしアメリカのイランに対する攻撃が起こるようなことがあれば、ホルムズ海峡を通過することを許さない、という内容の警告を発している。
これを受けての反応であろうが、アメリカは第5艦隊を稼動させ、イランがホルムズ海峡の通行を邪魔するようなことは許さないし、封鎖もさせない、イランの動きを絶対に阻止する、という強い立場を表明している。ちなみに世界の石油全体の40パーセントが、このホルムズ海峡を通過し消費国に届けられているのだ。
こうした動きを受けて、最初に敏感な反応を示したのは、クウエイトだった。クウエイトは不測の事態に備え、ホルムズ海峡を封鎖されても、石油の輸出が可能な方法を、湾岸諸国との協力で確保しようとしている。
クウエイトがいち早く、こうした動きに出るには、それなりの理由がある。もし、石油輸出が止まればクウエイト国民の間で、王家に対する不満が爆発する危険性があるからだ。
1990年に起こった湾岸危機時には、国民の相当部分がクウエイトの王家に対して、不満と反発を示していたからだ。最近のクウエイト国内の状況は、決して安定したものではなかった。
クウエイトのシーア派国民の不満や、ビドーン(何代にも渡ってクウエイト国内に居住しているにも拘らず、いまだに国籍を有さないクウエイトの居住者)の不満が高まっているからだ。
こうしたことから、犯罪に手を染めたクウエイトの王子の一人が、処刑されるということも起っている。クウエイトの王家はそこまでしなければ、クウエイト国民の不満を、抑え切れなかったのであろう。
サウジアラビアでも、大規模な反体制狩りが行われ、今年の前半だけで、既に昨年の3倍近い逮捕者を出している。もちろん、サウジアラビア王国政府はアルカーイダ掃討作戦だとしているが、逮捕者はアルカーイダのメンバーばかりとは限るまい。
アメリカとイランとの間で、戦争が始まるようなことになれば、湾岸各国の反体制派が、イランに呼応して立ち上がる、危険性が高いからっではないのか。
イスラエルでは北部の病院に対し、緊急事態に供えるよう準備をさせているということだが、これはイランが戦争を始めた場合、レバノンのヘズブラによるイスラエル攻撃が、起こりうるという判断から、出されたのではないか。ここに来て、中東情勢は急速に、緊迫の度を高めているということか。