7月28日の月曜日、トルコの憲法裁判所は与党AKP(開発公正党)に対する、審理をめぐる判断を出すことになっている。つまり、AKPが憲法に違反しているか否かを審理するか否かのだ。
AKPは今年に入り、スカーフを公共の場で着用することを許可したが、憲法裁判所はこれを、トルコ共和国の世俗主義に反する、憲法違反だとする訴訟を受け付けていた。
この裁判がもしAKPは有罪であり、トルコ共和国の憲法に反するという結論を出せば、与党AKP出身のギュル大統領、エルドアン首相を始め、70人ほどの国会議員が、政治活動停止命令を受けることになる。もちろん、AKPそのものも違反であり、解を命じられることになる。
この問題はこれまで何度も取り上げたので、これ以上状況説明をしない。それよりも、どのような結論が出るのかを、大胆に予測してみたい。アメリカは明確に、AKPの解散に反対している。EUもまた同じように、AKPが解散命令を受けるのでは、トルコのEUへの参加は、大幅に遅れると警告している。
つまり、アメリカもヨーロッパ諸国も、現在のトルコの与党AKPを、明確に支持しているということだ。それには以下のような理由がある。
アメリカはトルコをロシア、中央アジア、イラン、イラクからの、石油・ガスの集積地にしようと考えているが、これを実現するには、現在の与党AKPが最も協力的であり、しかも、国をまとめる力も強いと判断している。
現実に、AKPはこのエネルギー輸送のため、関係諸国との良好な関係を構築した上で、幾つものパイプ・ライン建設を実施してきている。そのなかでも、カザフスタンの石油を、地中海に運ぶことが出来るBTCパイプ・ラインは、カザフスタンの石油をバクーまでタンカーで運ぶことにより、完全にロシアを経由しないルートを、開発することが出来ているのだ。
アメリカやヨーロッパにとって、このトルコの与党の行動は、歓迎すべきものであろう。このことによって、ロシアのヨーロッパに対する圧力を軽減し、中央アジア諸国に対する、影響力も軽減できるからだ。
もうひとつアメリカにとって、トルコが重要なのは、イラクへの対応で、近い将来、トルコがアメリカの一部を、肩代わりをするであろうということだ。アメリカ軍の一部がイラクから撤退するであろうし、イギリス軍も来年にはほぼ全軍を、撤退させることをほのめかしている。それは、必ずしもイラク国内の治安状況が、よくなるからではない。ほかの理由によろう。
そうなるとどうしても、イラクに近いトルコに、期待しなければならなくなるということだ。もし、AKPが与党の立場を失い、野党にでもなったら、アメリカは再度、新しいトルコの与党との間で、そのことをゼロから協議しなければならなくなろう。それでは時間的に間に合わないのだ。
こうしたアメリカやEUの事情を考えると、トルコの憲法裁判所もそう簡単に、AKPを非合法として解散させることは、出来ないのではないか。AKPはいま最悪の場合に備え、来年3月の予定の選挙を、今年11月に早めることによって、対応することも準備している。
いずれの結果が出るかは、もうすぐ分かるのだが、あえて予測をしてみた。予測通りであることが、結果的には日本にとっても、プラスであると思われるのだが。