今年の3月以来続いている、トルコの憲法裁判所と与党AKP(開発公正党)との争いで、トルコの今後が不安だということは、外国投資家たちをトルコへの投資から、撤退させる危険性が、潜在的にあるということだ。
そうしたなかで、世界的に知られるリーマン・ブラザーズ社が、トルコの市場は投資先として、非常に魅力的だと推薦している。リーマン・ブラザーズ社の判断では、今回の憲法裁判所とAKPの争いで、結果的にはAKPが勝利するとしたようだ。
このリーマン・ブラザーズ社の判断は正しいと思われる。AKPが憲法裁判所の、同党に対するクレームに対し、全く不安を抱いていないし、若手の同党議員は、憲法裁判所に対し、挑戦的な発言すらしてきていた。
こうした流れのなかで始まった、エルゲネコン(影の権力集団)に対する内務省の厳しい対応は、与党の強気の姿勢を、如実に示しているものでもあろう。エルゲネコンには、トルコの著名人や軍人、学者、財界人、政治家、ジャーナリスト、マフィアなど、あらゆる層の人たちが含まれていることは、既に説明したとおりだ。
その巨大な見えない組織エルゲネコンが、内務省の取り調べの対象になり、そのメンバーの元将軍たちが、逮捕されたということは、トルコの内務省警察ばかりではなく、トルコ軍の中にも、相当数のAKP支持者がいるものと、想像できるだろう。
そのことを裏付けるように、7月10日ギュル大統領は、元統合参謀長のヒルミー・オズキョク将軍を招き、昼食を共にしながら、意見交換をしている。このことは、現役・退役軍幹部の一部とAKPとの、良好な関係が存在することを示していよう。
どうやら、今回の憲法裁判所を動かしての、反AKP派の策謀は、失敗に終わりそうだ。そうでなければ、エルドアン首相が、国内の政治危機、与党AKPの危機時に、イラク訪問に出かけることもなかろう。