アメリカによるイラン攻撃の懸念拡大

2008年6月29日

 ここ数日、外国の報道を見ていると、アメリカが昨年イランを攻撃することを躊躇したために、イランの核開発が進み、現在では阻止が困難な状態に、陥っているという記事や、イスラエルがなんとしても、イランの核開発を阻止しなければならないと考えている、といったニュースが増えてきている。

 他方、相変わらずアメリカはイラク、アフガニスタンと二つの戦争で苦戦しており、しかも膨大な戦費を使っていることから、三つ目のイランとの戦争を出来る状態にはない、といった判断をしている専門家もいる。

 しかし、状況は戦争無しとする人たちが考えるほど、心配ないのだろうか。これまでのマケイン大統領候補の湾岸諸国訪問、チェイニー副大統領の湾岸諸国訪問、ブッシュ大統領のエジプトのシャルム・シェイクで開催されたダボス会議や、湾岸諸国訪問での発言などを読んでいると、戦争を意識しなければならない状況が、相変わらずあると考える方が正しいのではないか。

 イスラエルはここに来て、イランに対する攻撃は空爆であり、そのターゲットも限定したと言い出している。もちろん、イスラエルがイラン攻撃に踏み切れば、アメリカは放置するわけには行くまい。アメリカがイスラエル同様に、イランとの戦争に踏み切ることになろう。

 その戦争の期間を、アメリカはせいぜい1ヶ月程度と考えていようが、それはあくまでもイラン国内で、既に展開している内部での破壊工作と、イラン国民のイスラム体制からの離反が、効果を出せばのことであろう。

 しかし、アメリカが空爆だけでイランとの戦争にけりをつけようとすれば、相当数の爆弾を投下しなければならないだろう。そうなれば、当然ことながらイラン国民の多数が犠牲となろう。

 もし、アメリカがイランとの戦争でもたつくようなことになれば、戦争の影響は周辺諸国にも及び、イスラム諸国の国民の間には、イランに対する同情も広がろう。そうなれば状況は悪化し、戦争や紛争、暴動が周辺諸国にも拡大することを、考えておかなければならないのではないか。

 私が抱いているような懸念を、日本政府は抱いているのだろうか。述べるまでもなく、戦争になれば湾岸諸国からの石油輸入は、当分の間(数ヶ月かそれ以上の期間)止まることも考えておかなければなるまい。そのような最悪の事態に対処する方法を、政府は検討しているのだろうか。

 イランをめぐる状況は、決して楽観できるものではない、ということを強調しておきたい。もし戦争にならなければ、それは幸運だったとし、戦時下での日本の対応を考えたことが、無駄だったと考えるべきではあるまい。