ブッシュ大統領はイラクとの長期治安協定をいまだに希望

2008年6月27日

 アメリカのブッシュ大統領はイラク戦争後、国連の決定に基づいて、イラクでのアメリカ軍の展開を正当化してきた。しかし、今年12月31日でその期間が切れることになっている。

 そこで、ブッシュ大統領はイラクのマリキー首相に対し、新たな長期間に渡る治安協定を締結するよう、圧力をかけてきている。以前にもこの欄でご紹介したが、イラクからは外務次官が日本を訪問し、日米安保の内容について、外務省からブリーフィングを受けて帰った。

 しかし、イラクでは宗教各派も政党も一般人も、誰もこの協定の締結を望んではいない。この治安協定はアメリカ軍が永久に、イラクに駐留することを認めることになり、イラクがアメリカの占領下におかれることになると、イラク国民の全てが認識しているからだ。

 アメリカ政府はこの治安協定で、アメリカ軍が必要と認めた場合、イラク人を逮捕拘留できる権利と、アメリカ人のイラクでの自由な活動の保証(イラク側にアメリカ人を逮捕する権利がない)を要求している。イラク側にとってこの点が、最も受け入れがたいようだ。

 イラクのマリキー首相の苦悩に全くかまわずに、ブッシュ大統領はなんとしても、この協定を実現させたいようだ。それは、イラク周辺諸国に対し軍事的な圧力をかけることが狙いであり、アメリカ政府はイラク国内に11箇所以上の基地を恒久化したいと望んでいるようだ。(現在430箇所以上のアメリカ軍基地、施設がある)

 イラン政府は最近になって、アメリカがイラン・イラク国境沿いに、4箇所の軍事基地を建設したと非難している。これらの基地には、イラク戦争のときにクウエイトに設置されたと同じような、レーダーその他の情報収集機器が、揃えられているというのだ。

アメリカ側の説明によれば、これら4基地は戦争を目的とするのではなく、あくまでもイランのイスラエル攻撃などといった事態を、防止することに目的があり、基地にはCIA、国防省、海兵隊員が勤務すると説明している。

言葉を変えて表現すれば、アメリカはイランに対する攻撃を十分に意識し、それに着々と備えているということであろう。