エジプトにはまだジョークがあった

2008年6月26日

 エジプト人はゆったりと流れる、ナイルの川がもたらす肥沃土に恵まれ、農産物が豊かであり、貧しい者も腹をすかすことはなかった。このためエジプト人は、辛いことがあってもジョークを交わしながら、それに耐えてこられたのだ。

 しかし、最近は様子ががらりと変わった。本来であればナイル川の水資源と肥沃な土壌で、小麦の生産は国内需要をカバーしていたのだが、最近では観光客用に、果物や野菜の栽培面積が増え、小麦の生産量が激減している。したがって、不足分はアメリカから輸入するということだ。

 パンの値上がりの主たる原因は、小麦の輸入価格の値上がりによる。腹が減ってはジョークも減るのだろうかと思って、友人のエジプト人に聞いてみると、彼は次のような最新のジョークを教えてくれた。

 

「その1」

 ナセル大統領は自分よりおろかな後継者を探して、副大統領にすることにした。10年間探した結果、副大統領に指名されたのがサダトだった。

 サダト大統領もナセル大統領に倣って、自分よりもおろかな人物を副大統領にすることにした。サダト大統領が7年間探した結果がムバーラクだった。

 ムバーラク大統領もナセル、サダト両大統領に倣って、自分よりもおろかな人物を副大統領に指名しようとして探したが、25年が過ぎたいまも副大統領に指名する人物は決まっていない。

 

 そのムバーラク大統領に関するジョーク

「その2」

 ムバーラク大統領とナジーフ首相が町を歩いていると、長い人の列を見かけた。ムバーラク大統領がナジーフに何の列なのかを聞くと、ナジーフ首相は「大統領閣下、国民は安いパンを買うために並んでいるんです。」と答えた。するとムバーラク大統領は「そうかまだ国民にはものを買う金が残っていたのか。」と言った。

 

 二つのジョークに関する説明は要るまいが、あえて説明すると、ムバーラク大統領はおろか過ぎて、彼よりもおろかな人物を探すのが困難だという、ムバーラク大統領に対する痛烈な批判と、エジプトの大統領は常に部下の裏切りを恐れているということだ。そしてこの副大統領を探す期間が、各大統領に対する評価を示してもいるのだ。

 もうひとつのジョークは、ムーラク大統領が国民の苦しみを、全く解していないということだ。そのムバーラク大統領の次男ガマールを、ムバーラク大統領は自分の後継者にしたいと望んでいるようだが、エジプト国民の間ではいまひとつガマールの人気がない。彼についてあるエジプト人はこう評していた。

 「ガマールが5歳のときムバーラクは空軍のトップだった。ガマールが00歳のときムバーラクは副大統領に就任していた。そしていまは大統領だ。そんなエリートの金持ちには、国民の生活ぶりや苦しみは全く分からない。

彼がムバーラク大統領の後継者になったら、ムバーラク以上にひどい政策を実施することになるだろうということはいまから想像がつくよ。】なんとなく納得がいく説明ではないか。