エジプトにはうなるほど金があるという話

2008年6月26日

 友人のビジネスマンが語るところによれば、いまエジプトの銀行には、膨大な金がうなっているというのだ。行き場の無い資金を、何とか優良企業に貸し付けようと、銀行マンから一日何度も電話がかかってくるし、銀行マンが企業を訪問しているというのだ。

 一体何処からエジプトに、そんな金が集まっているのだろうかと、誰もがいぶかろう。実はエジプトは、例外的産油国なのだ。例外的産油国というのは、OPECにもOAPEC にも参加せずに、市場に合わせて有利なときに、有利な価格で石油が売れる国という意味だ。

 石油の価格は暴騰し、1バーレルの価格が170ドル台に近づいている。その恩恵をエジプトも受けているのだ。もちろん、湾岸産油諸国などからの資金の流入も、ものすごい金額に上っているだろう。

加えてエジプトへの観光ブームが続いている。日本からの小規模な観光客ではなく、欧米や観光では新興の中国、ロシアから、そして東欧圏や北欧から、観光客が集まってきているのだ。

 銀行から金を借りてくれと依頼されている友人は、「今後3年以内に紅海沿岸に3棟のホテルを建設する。」と言っていた。各棟は400室の客室を擁する規模だということだ。

 彼は自己資金で十分建設できるから、銀行の金を借りなくても済むと豪語し、外人観光客が多いから、すぐ元が取れると言っていた。

 エジプトで発行される毎日の新聞にも、エジプト政府の新計画なるもののニュースが掲載されているが、それらは何十億ドル規模のものがほとんどだ。小さいビジネスなど、目もくれないということであろうか。

 確かに、エジプトのカイロや郊外には、数億から数十億の豪邸開発が行われており、それを主にエジプト人が購入しているのだ。カイロの街中にはスター・シテイなる超巨大なショッピング・モールが建っているが、そのなかには、世界中のブランドの出店が並んでいる。それがペイしているのだからすごい。

 エジプトの現状は、まさに天国と地獄であろうか。85パーセントの庶民が、パンを買うのにも困っているというのに、残りの15パーセントの富裕層は、金を使うのに飽きたというのだ。

 カイロ郊外のアレキサンドリアに続く、砂漠道路沿いのレストランの駐車場には、ベンツ、BMW、ジャガー、ルノーなどの外車が所狭しと並んでいる。そこは、家族で贅沢な食事を楽しんでいる人たちであふれているのだ。

 エジプト駐在の日本人企業マンや報道特派員たちのほとんどは、高級住宅街の存在も、郊外のしゃれたレストランの存在も知らないで、カイロのザマーレクとモハンデシーンと呼ばれる、イギリス統治時代からの高級住宅街(?)に篭もり、そこから一歩も出ようとしていないのだ。

そして、エジプトの貧困層の苦しみも知らなければ、富裕層の贅沢の限りも知らないで、任期を全うする日を待ちあぐねているのだ。「エジプトは貧しいだから、日本政府は援助すべきだ。」と外務省は言うだろうが、日本のけちな援助額で、エジプト政府が喜びはしないし、日本が援助しても、貧困層を救済するには、何の役にも立たないのだ。