一番信用できるのはイランか

2008年6月10日

 イラクとアメリカとの間で今話し合われている、アメリカ軍のイラク駐留問題は、イラク、アメリカ、イランそれぞれにとって、大きな問題となりつつあるようだ。

 イラクのマリキー政権にしてみれば、いまの段階でアメリカ軍に出て行かれては、イラク国内は内戦状態に陥る危険性が高いだろう。なかでも、キルクークの領有問題をめぐり、キルクーク地域には石油があるだけに、クルドとスンニー、シーアとの対立が先鋭化していくだろう。

 そのことから、アメリカが希望しているイラクとの治安協定について、ズイバリ外相(クルド出身)は前向きな発言をしている。それは、タラバーニ大統領(クルド出身)も同じであろう。そして、現政権を指導するマリキー首相)(シーア派)にとっても、アメリカの支援無しには、各派が入り乱れるイラクの国家を、運営していくことを容易ではあるまい。

 アメリカとの治安協定をめぐり、シーア派やスンニー派国民の間からは、強い反対があることはすでにお伝えしたとおりだが、何とかこの治安協定をまとめたいと願うマリキー首相は、イランを訪問しアハマドネジャド大統領やモッタキ外相らと話し合うと共に、イランの最高権威者であるハメネイ氏との会談も行った。

 マリキー首相はイランの要人らに対して「イラクがアメリカと結ぶ合意は、イランを敵視するものではない。」「合意はイラクをアメリカ軍の攻撃のジャンプ・パッドにはしない。」と説明しているが、イラン側がそのような言葉を信じるはずが無い。

 アメリカの国防省もまた、マリキー首相の発言を擁護するように「イラクのアメリカ軍基地は、周辺諸国に対する攻撃には使わない。」と述べている。

 これらマリキー首相やアメリカの国防省の説明に対し、ハメネイ師は明確に「アメリカがイラク国内に存在すること自体が、イランにとっては不愉快なのだ。」と本音を語っている。ハメネイ師は同時に「アメリカがイラクに存在することが、イラクの安定の邪魔になっている。」とも語っている。

 アメリカがイラクに恒久的に持とうとしている軍事基地が、周辺諸国に対する攻撃を前提としていないのであれば、何のために必要なのだろうか。それは日本の場合と同じように、周辺諸国よりも、軍事基地のあるイラクに対し、威圧をかけるために必要だということだろうか。 

 アメリカやマリキー首相がどう説明しようとも、イラク国内のアメリカ軍基地はイランをはじめ、中央アジア諸国、湾岸諸国に対する無言の威圧を加えるものとなろうし、必要によっては、攻撃の基地になるということであろう。

 そうである以上、イランはイラクにアメリカ軍が基地を持ち、それを長期的に使うことに対して、賛成するはずが無い。一説によれば、マリキー首相はイランにアメリカ軍の長期駐留に対する賛同を得に行き、イラン・イラク軍事協力に合意したということだ。イランとイラクはこの合意の覚書に、双方の国防大臣がサインしているということだ。

 この情報が事実であるとすれば「ミイラ取りがミイラになった。」話と共通するではないか。アメリカはこのことを確認し、事実であるとすれば、早い段階でマリキー首相の首を挿げ替えるのではないか。