イスラエルは以前から、イランの核施設に対する空爆を行う意思のあることを、公言してきている。そのイスラエルは、1980年代にはイラクのオシラク原発を空爆し、つい最近では、シリアの核施設を空爆で、完全に破壊している。
それだけに、イスラエルの空爆警告は、真実味を十分に帯びているのだが、ここに来てそれを、より一層印象付ける発言が、イスラエルの要人によって語られた。元国防相で現在副首相のモファズ氏が「イランがもし核開発を止めないのであれば、イスラエルはイランの核施設を空爆する。」と語ったのだ。
これにはアメリカもあわてているようで、早速ホワイト・ハウスのスポークスウーマンのダナ・ペリノ女史が、ブッシュ大統領はイランの核問題を、外交で解決するつもりであることを強調している。もちろん、だからといってブッシュ大統領が、イランに対する軍事攻撃を、選択肢から外したわけではないとも語っているが。
モファズ副首相はイランの核対応については、既に外交や制裁では埒があかないとも語っているのだ。イランが核開発を止めることは、ほとんどありえないことから考えると、イスラエルは本当にイランを空爆するかもしれない。その可能性はいままでと比べ、格段に大きくなっているのではないか。
こうした雰囲気のなかで元国防情報局のトップだったアンソニー・コーデスマンという人物が「もし核戦争になったらイスラエルとイランはどうなるのか」ということを解説している。
彼の解説によれば、2010年の段階で、イランが30発以上の核兵器を所有し、イスラエルとイランが核による攻撃を相互に始めた場合、イラン側には攻撃から21日以内に1600万人から2800万人の死者が出ようというのだ。
他方、イスラエル側には200発以上の核兵器を保有しているが、イランから攻撃されれば、同じ期間に20万人から80万人の死者が出ると予測している。
この戦争が始まれば、イスラエルはエジプトやシリアからの攻撃も、覚悟しなければならないというのだ。そうなれば、イスラエルはエジプトのアスワンダムやスエズ運河も攻撃することになり、当然の帰結として、カイロなどは一瞬にして大洪水に見舞われたと同じ状態になり、壊滅するというのだ。
結果的に、イスラエルとイランとの核戦争に介入するシリアは、1800万人の死者を出し、シリアは再起不能状態に陥ると予測している。他方、イスラエルはシリアからの化学兵器や細菌兵器によって80万人の犠牲者を出すということだが、再起可能だとしている。
エジプトについてはカイロ、アレキサンドリア、ダミエッタ、ルクソール、アスワンといった主要都市が攻撃の対象となり、前記したスエズ運河やアスワンダムも攻撃対象となるということだ。コーデスマン氏はエジプト側の犠牲者数については述べていないが、数千万人に及ぶことは間違いあるまい。
コーデスマン氏の予測は、もしイスラエルとイランが戦争した場合、エジプトやシリアも加わることになり、結果としてペルシャ文明は終焉し、エジプト文明も滅び、石油時代も終わるというものだ。そしてインドや中国にも、大きな被害が及ぶことになるというものだ。つまりこれは、まさにハルマゲドンという状況といえよう。
イスラエルやユダヤ人は、これだけ事態を深刻に受け止めているということを、実感を持って受け止められる日本人は、どれだけいるのだろうか。原爆被害の経験を有する広島や長崎の人たちですら、実感がほとんどわかないのではないだろうか。いまこそ日本が世界を救うため、に立ち上がるときではないのか。その期待は全く持てないのだが。