イスラエルのエルサレム・ポストが報じているので、事実とは少し異なるかもしれないが、記事の内容が重要であることと、大筋ではあまり違っていないと思われるので、この記事の要旨を紹介することにした。
エルサレム・ポストは6月6日付のインターネット・ニュースで「エジプトはわれわれの存在を否定しようとしている」というタイトルの記事を掲載した。
この記事によれば、エジプトに居住していたユダヤ人に関する、歴史的な記録が、いま焼却されようとしているということのようだ。その焼却される資料のなかには、貴重な書籍やユダヤ人の出生証明書、宗教関係書籍などだということだ。
エジプトはユダヤ人組織が要求している出生証明書などの引渡しを、拒んでいるということだ。そのことからユダヤ人組織は「エジプトはユダヤ人が居住していたことを否定しようとしている、、。」と主張しているのだ。
エジプトにはイスラエル建国後、ナセル革命前後の段階まで、多数のユダヤ人が居住していた。もちろんエジプトのカイロなどには、いまだにユダヤ教のシナゴーグが存在しているし、少数ではあるがユダヤ人が居住している。
ユダヤ人の記録によれば、1948年にエジプトを逃れ、他国に移住した人たちの数は、10万人近いということだ。しかし、いまでは20人から100人程度しか、エジプトにはユダヤ人が残っていないということのようだ。(エジプトにいまでも残っている人たちは皆高齢者で、もう移住しないでエジプトで死にたいということのようだ。)
ユダヤ人組織が主張するところによれば、もしユダヤ人がいまエジプト国民であることを主張した場合に、それを否定できなくなるからだというのだ。しかも、現在の段階ではエジプトから出国した、ユダヤ人たちの子供や孫もいるわけであり、その数は相当数に上るだろう。
ユダヤ人組織はエジプトに居住していた、ユダヤ人の調査を目的とする、旅行を企画したが、エジプト政府に拒否されたということだ。
現在の段階になって、エジプトを出国したユダヤ人が、エジプト国民であることを主張し、エジプト国籍を要求し帰国するとしたら、やはりエジプト国内では大きな問題となろう。
そればかりではない。エジプトから1948年の段階やそれ以降に、を出国したユダヤ人は、エジプトのカイロやアレキサンドリアに、不動産を所有していたはずだ。エジプトに居住していたユダヤ人が、所有していた不動産の返還を要求し始めたら、とんでもない裁判沙汰になろうし、その不動産をエジプト政府が買い上げ(補償)るとすれば、それは莫大な金額に上ろう。(以前にカイロのメイン・ストリートにあるデパートなどのビルの相当数が、元はユダヤ人の所有だったという話を聞いたことがある)
この問題はエジプトばかりでは済むまい。エジプトで訴訟が始まり、ユダヤ人たちの要求が一つでも通るようなことになれば、他のアラブに対しても、同様の訴訟が起こることは必至であろう。
この問題はいま、UNESCOに対して文書で持ち込まれた。そのUNESCO の訴訟の受け手は、現在事務総長に就任している日本人の「マツウロコウイチロウ」氏(ローマ字表記のまま)だということだ。マツウロ氏はこの問題をどう処理するのか、結構難しい問題になると思う。
アラブ側にとっては大問題になろうし、ユダヤ側にとってもやはり、自分たちの歴史の一部が抹消されるとなれば、ただ事ではあるまい。そして、この問題への対応は、マツウロ氏個人の問題ではなく、アラブ・ユダヤ双方と日本との関係にも影響してこよう。