トルコの仲介で、イスラエルとシリアが和平交渉を始めて久しい。当初はほとんどの中東専門家たちが、両国間の和平実現の可能性を、全く信じていなかったのではないか。
しかし、ここに来てどうも以外に裏では、イスラエルとシリアの交渉が現実味を帯びてきているのではないか、と思えてならない。たとえば、イスラエルでは多くの強硬派の政治家たちが、「ゴラン高原を手放さない。」と主張し始めていることも、和平交渉が前進している証ではないか。
イランもシリアとの関係維持を強く主張し、シリアがイスラエルとの和平を実現することに対して、強い反対の立場を示している。シリアはシリアで、イランに対し、イスラエルとの交渉でヘズブラやイランとの関係断絶は、条件として提示されてはいないと説明している。
シリアのダマスカスに拠点を置いている、ハマースのリーダーであるハーリド・ミシャアルは、場合によってはシリアを離れ、イランに拠点を移すと言い出している。しかも、このハマースがシリアに敵対する、イランの道具にもなりうるというのだ。
最近になって、シリアはIAEAの査察を受け入れると発表し、何の抵抗も査察に対して行わない方針のようだ。加えて、シリアのアサド大統領は、イスラエルとの和平交渉で、保証者(スポンサー)が必要だと言い出している。しかも、アサド大統領はアメリカが保証者になる必要がある、とまで言い出しているのだ。
一体、何がここまでイスラエルとシリアとの和平交渉を、現実的なレベルまで引き上げたのであろうか。それは、トルコが仲介者になったこともひとつだろうが、そのことに加え、イスラエルのオルメルト首相が、政治的に危険な状況に入ってきていることにも、起因しているのではないか。
オルメルト首相は汚職問題で追い込まれ、近い将来に辞任するかもしれないのだ。既に、リブニ外相やネタニヤフ元首相などが、次期首相候補として活発に動き始めているのだ。しかも、選挙は今年の11月頃という予測が、既に出ているのだ。
オルメルト首相の辞任は、時間の問題かもしれない。あまりにも明確な汚職の証拠が、揃い過ぎているからだ。そうなると、オルメルト首相は何とか、歴史的大逆転をしたいと考えているのではないか。
シリアとイスラエルとの和平が実現すれば、イスラエル国民の安全の度合いが、大幅に高まることになろう。シリアが和平を結べば、レバノンのヘズブラに渡る兵器の量は、大幅に減少しようし、イスラエルに対する敵対行為も、大幅に低下することが予測されるからだ。
オルメルト首相はいま、汚職による辞任という不名誉から逃れ、イスラエルの歴史に名を留める、シリアとの和平実現の英雄的首相というゴールに向け、猛ダッシュしているのではないか。