アメリカはイラク国内に、恒久的な基地を確保するために、イラク政府との間で、長期間に及ぶ治安協定を、結ぼうとしている。それを急ぐのは、今年中にいままでの協定が、期限切れになるからだ。
しかし、このアメリカの希望している治安協定は、イラク国内にアメリカが13の基地を有し、駐留のアメリカ軍民は、犯罪を犯してもその罪を、イラクの司法が裁くことが出来ない性質のもののようだ。
つまり、沖縄の米軍駐留とほぼ同じ条件か、それよりもアメリカ側に有利なものであろう。日本本土の場合も、沖縄の場合も、当初はいま以上にアメリカに都合のいいものであったのだろうが、次第に改善されてきているのであろう。
したがって、もしイラクがこの協定を交わした場合、アメリカ軍の将兵は、犯罪を犯しても、罪を問われることなく、平気でイラク国内に、駐留し続けることが出来る、ということであろう。
イラクではこうした事情から、シーア派のモクタダ・サドルを先頭に、協定合意反対の動きが、活発になってきている。民族派、愛国者、文化人、宗教家など多くのイラクの人たちが、反対しているのだ。
モクタダ・サドル師は「金曜礼拝の後は、毎週デモを行おう。」とイラク国民に呼びかけている。イラクのシーアは最高権威者であるシスターニ師も、「合意には国民投票が必要だ。」と語り、反対の立場に回っている。
イラク国民の反対を前に、多くのイラク国会議員は、賛成票を投じることに躊躇しているが、アメリカはこれらの議員に対し、賛成に回れば300万ドル与える、という買収工作を始めたという情報が流れている。
こうした状況を見ると、今回のアメリカ・イラクの治安協定は、合意が難しいと思えるのだが、そうではなさそうだ。
現段階でイラク政府は、合意するとは言っていないが、アメリカと似通った協定を交わしている、ドイツ、日本、韓国、トルコなどの実例を知るために、調査団をこれらの国々に送ることを決定している。
日本にも近く、日米安全保障条約の実情調査団が、イラクから派遣されて来るものと思われるが、この際、イラクの調査団は自民党や、政府の関係機関にだけ実情説明を受けるのであろうか。あるいは、民主党や共産党にも実情説明を申し込むのであろうか。
アメリカとの協定を結んで、既に50年近い期間が経過している日本は、やはりこの合意のもたらす、いい点と悪い点を、正直に説明してあげるべきであろうと思われる。
もし、社会党や共産党、民主党がこの訪問団の来日を知らないのであれば、中東TODAYの読者の誰かが教えてあげ、野党各党は在京のイラク大使館に、訪問団の来日時期を、問い合わせるべきではないか。