多分、アメリカが強い圧力をかけているのであろう、イラクのマリキー首相は何とか、アメリカとの間に治安協定を結びたい、と考えているようだ。
そのためには、イラクのシーア派最高権威者である、アヤトラ・シスターニ師の支持を取り付けなければならない。それ無しに話を進めた場合には、イラクのシーア派の相当部分が、マリキー首相の合意に反発して、反政府の武力闘争を始めるからだ。
このために、マリキー首相はナジャフ市を訪問して、シスターニ師に会ったが、色よい返事はもらえなかった。マリキー首相はあいまいな表現で、シスターニ師の支持を得たと言ったが、シスターニ師の側近がすぐに、マリキー首相の発言を否定した。
それどころか、シスターニ師は「絶対にアメリカとの間に、治安協定を結んではならない。私が生きている間、許可することはない。」と語ったとシスターニ師の側近が、マリキー首相とシスターニ師の、対話の内容を明かしている。
当然であろう。イラク国民はアメリカの恒久的な支配に繋がるような、協定をやすやすと結ぶはずがない。その合意がいかに危険であるかということを、彼らは知っているのだ。
レバノンのシーア派ヘズブラの幹部の、ハサン・ナスラッラー師も、「イラクがアメリカとの間に、治安合意を締結することに絶対反対だ。合意はイラクの治安ばかりではなく、政治もイラクの石油その他の資源も、支配することになるからだ。」と語り、反対の立場を明らかにしている。
当然のことながら、このヘズブラやシスターニ師の見解は、イランが支持していようし、シーア派国民ばかりではなく、ほとんどのイラク国民が、反対しているものと思われる。
それでも、マリキー首相はアメリカとの間に、治安協定を結ばざるを得ないのではないか。そうであるとすれば、彼はアメリカがほんの少しでも、ガードを緩めた瞬間に、暗殺される危険にさらされることになろうということだ。