イラクのシーア派の間では、イラクのナジャフ市に住むイラン人の、シスターニ師の存在はいまだに絶大だ。マリキー首相はシーア派の出身であり、シスターニ師を無視しては、イラクの統治がスムーズには行かないことを、十分わきまえている。
このため、マリキー首相は必要に応じて、シスターニ師の考えを伺いに行き、自分の考えに対する支持を求めてきた。それ無しには、イラクのシーア派の間ですら、彼の決定は意味を持たなくなる、危険性があるのだ。
今回も、マリキー首相は、重大な決定を前に、シスターニ師に賛同を求めに、木曜日にナジャフ市まで出向いて行った。その重大な案件とは「アメリカ軍の長期駐留合意」に関するものだった。
イラク国内での、このアメリカ軍の長期駐留合意が、イラクとアメリカとの間で交わされれば、アメリカ軍はほぼ永久に、イラク領土内に軍事基地を持って、留まることができるのだ。
マリキー首相はナジャフ市で行われた、シスターニ師との会談の後、彼の考えが支持されたとして、このイラク・アメリカ合意を進めようとしている。
しかし、このマリキー首相の動きを危険だとし、ナジャフ市のシスターニ師の側近が「シスターニ師はマリキー首相との会談で、このことについて強く反対の立場を述べた。」とマリキー首相の主張を否定した。
シスターニ師の側近は、シスターニ師がマリキー首相に対して述べたのは、マリキー政府を認めたのと、イラクが治安を確立すること、独立を守ることだったと説明している。
アメリカはイラクとの間にも、日本や韓国などと交わしているような、恒久的な軍の駐留合意(軍事的占領支配)を取り付けたい意向だ。
マリキー首相がこの合意を受け入れるように、アメリカ側から相当の圧力を受けているのであろうが、今回のシスターニ師との会見内容に関する、虚偽の発言をしたことにより、今後マリキー首相がシーア派国民を説得していく上では、すこぶる不都合なことになっていこう。
彼の言葉が信用されなくなるからだ。しかも、最も権威のあるシスターニ師との会談内容についても、嘘を言ったということになると、イラクのシーア派国民の間で、彼の信用は失墜したということではないのか。