日本の新聞はベツレヘムで開催された、パレスチナ投資会議について伝えているが、現地ではどの程度の関心がもたれているのだろうか、ということが気になった。
そもそも、パレスチナの西岸に企業を誘致して、物を生産し外国に輸出することによって、パレスチナ人の雇用機会を増やし、生活を向上することにより、平和な状態を創ろうと考えたのはトルコだった。
しかし、今回の会議に関するニュースがトルコのTODAYザマンには載っていない。少なくとも、サウジアラビア系のアルハヤートのフロント・ページでも紹介されていない。加えて、ヨルダンのヨルダン・タイムズでも、紹介されていないのだ。
日経新聞のネットでは、サウジアラビアを始めとする、湾岸諸国からの投資が伝えられている。サウジアラビアの事業グループによる、西岸ラマラへの2億ドル(約206億円)規模の、ショッピング・モール建設や、カタールの事業家による、住宅・商業団地建設が決まったということだ。
しかし、それらの投資は皆消費目的の投資であり、西岸地区の安価な労働力を当て込んだ、生産目的の投資ではないようなのだが。
今回の会議で決まった、パレスチナの西岸地区に対する投資総額は、20億ドル相当といわれているが、実際にどの程度実現するのであろうか。イスラエルが西岸地区への入境を制限しており、西岸地区で生産されたものの輸出も、制限しているような状態で、実際にことが進むのであろうか。
サウジアラビアやカタールは、西岸地区にコンドミニアムやショッピング・モールなどを建設する予定だが、一体、誰がイスラエルの厳しい検閲を受けて、までそこに行く気になるのだろうか。西岸地区に居住するパレスチナ人には、それだけの購買力はない。
ドバイ政府が実施して成功したような、観光と居住を目的とする、住宅販売を当て込んでの、西岸地区での住宅建設であるとすれば、これは始める前から失敗であろう。誰も爆弾が爆発したり、銃弾が飛んでくるところに、安住できるとは考えないからだ。
今回のパレスチナ投資会議は、どうも、コーナーに追い詰められた、マハムード・アッバース議長体制を支えるための、短期間のアドバルーンではないか、と思えてならないのだが。