イラクの自衛隊通訳が危険な状態に

2008年5月24日

 日本政府がイラクのサマーワに自衛隊を派遣し、一人の死者も出さずに、その任務を完了できたのは、奇跡に近いものだった。まさに、日本人の細心の注意力と、謙虚な行動がそれを可能にしたのであろう。

 しかし、その完全な成果に、いま傷がつき始めている。それは、イラクのサマーワで自衛隊員を支えてくれた、現地のイラク人通訳者たちが、マハデイ軍、警察、軍人によって殺害される、危険に直面しているのだ。

 イラクのサマーワで自衛隊員を守ってくれた、オーストラリア軍が6月に撤退するが、オーストラリア軍は現地人通訳たちに対しオーストラリアへの永住権を認めている。つまりオーストラリア軍の通訳をしたイラク人はオーストラリアにのがれマハデイ軍に殺されずに済むということだ。

 しかし、日本はこうした措置をとっていない。サマーワの通訳者たちから、日本政府に対する移住許可の要請が、何度となく出されたようだが、何の返事も返ってこないというのだ。

 日本の自衛隊の通訳をした知人が、メールを送って救済を求めてきた。彼は日本政府には、イラク人通訳を受け入れるつもりがないことを知っている。彼はオーストラリア政府が、600人の受け入れを決定しているが、実際に通訳に携わったのは76人だから、日本政府からオーストラリア政府に依頼して、日本側の通訳者も受け入れてくれるように、依頼して欲しいというのだ。

 彼の考えによれば、オーストラリア軍が自衛隊の警護もしていたのだから、交渉の余地があるのではないかというのだ。

 もし、このイラクの通訳者たちに対し、何の救済の手も打たないのであれば、日本政府と自衛隊の名誉は、大きく傷つくことになろう。まさに、イラク人を自国民の安全のために利用し、その後は使い捨てにした、ということになるからだ。

 解決方法は幾つかある。世界から笑われないような、責任のある行動を実行する気があるか否かは、政治家と官僚の気持ち次第だ。