カイロのグランド・ハイヤット・ホテルはアルコール禁止に

2008年5月24日

 アラブ人にとっても欧米人にとっても、エジプトに観光旅行に行く楽しみは、ピラミッドやスフインクス、ルクソ-ルの遺跡を見ることに加え、エジプトではアルコールが、自由に飲めるからであろう。

 確かに、ルクソールでもカイロでも、遺跡を遠望しながら夕刻に飲む、ワインやウイスキー、ビールの味は格別であろう。

 カイロのグランド・ハイヤット・ホテルは、そうした旅行者の贅沢を十分に満足させてくれる素晴らしいホテルのひとつだった。ベランダに出れば、ホテルの真下にはナイル川が流れ、遠くにピラミッドが見えるからだ。

 ホテルのエントランスも広く、比較的静かだ。他のホテルのような混雑は、あまり感じないで済むことも、このホテルのとりえだった。しかし、それが一変したのだ。

 カイロのグランド・ハイヤット・ホテルのオ-ナーである、シェイク・アブドルアズイーズ・アルブラヒム氏が、ホテルでのアルコール提供を禁止したのだ。彼はサウジアラビアの大金持ちで、王族の一員でもある。

 問題は、他のホテルのオーナーにも、サウジアラビアを始めとした、湾岸諸国の人たちがいるということだ。そうなれば、グランド・ハイヤット・ホテルのオーナーと同じような判断をし、アルコールを禁止することになるかもしれない。そうなれば、エジプトの観光の魅力の半分が、消えてしまうことになろう。

 述べるまでもなく、エジプトにとって観光は、石油ガスの輸出、スエズ運河の通過料、外国からの出稼ぎ者の送金と並び、最も大きな収入源なのだ。

 欧米人ばかりではなく、湾岸諸国からの観光客も、結構アルコールを飲んでいたが、自国ではアルコールが飲めない彼らにとっては、エジプトのカイロで飲むアルコールは、数少ない楽しみの一つであったろう。

 私も元は大酒飲みだったが、いまは全く口にしなくなった。だが、酒好きの人の気持ちはよく分かる。まさに干天に慈雨といった感じであったろうに。

 問題はこの結果、エジプトへの観光客が激減するのではないか、ということになるだろうが、案外そうでもないかもしれない。湾岸から来る観光客の多くは一族郎党そろってくる場合が多く、楽しみの第一は酒ではなく、カイロの緑と水、そしてショッピングだからだ。

 大人の衣服から子供の衣服、おもちゃとありとあらゆるものが手に入り、しかも価格は他のアラブの国に比べ、ダントツに安いのだ。最近では、欧米企業の進出もあり、製品の質もよくなり、私もシャツを始めとする、綿製品を買ってくることがある。

 そうは言っても、やはりアルコールの飲めなくなったカイロのホテルは、少し寂しい気がする、ステッラ・ビール(エジプト産)インポート・ビール、それにワインではオマル・ハイヤーム、、、、。外国産のワインやウイスキー、ブランデーも加わり、沢山の種類のアルコールを楽しむことが出来ていたのだ。

 トルコではスカーフを被ることを、認めるか否かで大騒ぎになっているが、エジプトのアルコールは、非イスラム教徒にとっては、もっと関心のある重大問題だと思うのだが。

今のところ、欧米の何処からも反対意見が出ていない。非イスラム教徒にはアルコールを飲む自由があると思うのだが、石油価格の高騰の力に、卑屈になっているのだろうか。