5月22日 中東TODAY
「アラブ各国はブッシュ大統領に激怒している」
ブッシュ大統領の今回の中東訪問は、アラブ各国首脳を激怒させたようだ。親米派といわれるサウジアラビアのアブドッラー国王も、パレスチナのマハムード・アッバース議長も、エジプトのムバ大統領も例外ではない。
ブッシュ大統領はアラブの首脳を激怒させる、どんな発言をしているのだろうか。最も危険な発言は「ユダヤ人は選民だ。」という言葉であろう。したがってユダヤ人にはアラブの土地を占領し奪っていいということになる。この発言は、パレスチナには土地の権利など、無いと言っているのと同じだ。
次いで、イスラエルの安全のためには、イラン攻撃も辞さずという発言だ。もし、イラン攻撃が起これば、湾岸諸国はイランの報復攻撃によって、壊滅状態になる危険性が非常に高いということだ。つまり、イスラエルの安全のためには、湾岸諸国は犠牲になって当然だという意味だ。
もうひとつの危険な発言は、アラブ諸国に対して「民主化を進めること、女性の権利を、もっと認めること。」という発言であろう。もし、ブッシュ大統領が言うように、アラブ諸国が民主化を進めれば、ほとんどの体制が転覆することになろう。
もし権力側が打倒されれば、権力の座にいた人たちが、多数絞首刑になる危険性があるのだ。つまり、民主化を進めるということは、アラブの支配者たちに対して、死ねと言っているのと同じことなのだ。
実際に以前、エジプトで自由選挙を実施したところ、反政府派が80パーセント以上の議席を、確保したということがある。それは、アラブの場合ほとんどの国がそうなるだろう。シリアもマイノリテイで15パーセントにも満たない、アラウイ派出身のバッシャール・アサド大統領が統治しているのだ。もし民主化が実施されれば、一瞬にして反政府のスンニー派が、権力の座を奪うことは誰にも分かろう。
ブッシュ大統領はアラブマスコミを批判し、かつ「アメリカはこの地域の人権や政治受刑囚について、深い関心を寄せている。」とも発言しているのだ。
こうしたアラブの首脳たちの怒りを、如実に表す発言が、エジプトのアブルゲイト外相の口を突いて出た。彼は「イスラエルとアメリカの戦車がアラブの土地に存在し続ける限り、もっと不安定になっていくだろう。」と語っているのだ。彼は「イスラエルが本当に和平を望むのであれば、占領を明日にでも止めることだ。」とも語っている。
この一言は、まさにアラブの権力者と、大衆の気持ちを代弁している。アラブ人の誰もが、イスラエルの存在を毛嫌っており、アメリカのアラブへの関与を嫌っているのだ。
問題は、このようなアラブ側の要人による、反米発言が露骨に出た後だ。その国のアメリカとの関係は、非常に厳しいものになっていくということだ。それを止める力は、ロシアにもヨーロッパにも中国にもない。残念だがアラブから見れば、日本は全く期待の対象外でしかないのだ。