クウエイトで選挙が行われたが、その結果は、イスラミストが大幅に増加した、というものだった。50議席のうち24議席が、イスラミストによって占められたと、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙は伝えている。
女性も立候補していたが、これは全滅だったようだ。その辺の事情について、ヨルダン・タイムズ紙は「湾岸地域の選挙では、家族の方針にそって、投票が行われるからだ。」と解説している。つまり、家長の方針に沿って、女性も投票するため、女性の候補者に女性票が集まる、ということはないということだ。
以外だったのは、ムスリム同胞団が選挙前の半分の、3人になったということだ。解説では、ムスリム同胞団は穏健派イスラム主義者たちだとされている。
これとは対照的に、シーア派がこれまで議員が1人だったものが、今回の選挙で5人に増加していることだ。
しかも、彼らのうち2人が、レバノンのシーア派ヘズブラの軍司令官である、イマード・ムグニエが暗殺されたとき、クウエイトで抗議デモに参加していた人物だ。つまり、バイバリのイスラム原理主義者、あるいはイスラミストと言える人たちだ。
こうした社会的変化は、何故いまクウエイトで起こっているのだろうか。ひとつは、クウエイト国内にアメリカ軍の基地が、存在することが挙げられる。クウエイトのシーア派は、イラクのシーア派と強い関係にあるのだ。
加えて、インフレの高進も理由であろう。クウエイトが石油収入により、金満国家だといわれて久しいが、国民やクウエイトに居住する人たちの、全てがそうとは限らないのだ。
クウエイトに住む人たちの間には、幾つもの階層があるのだ。クウエイトの一等国民、二等国民、ビドーン、外国人などだ。一等国民はあらゆる面で、優遇されているが、二等国民は必ずしもそうではない。
湾岸戦争の後で、問題が顕在化したビドーンは、クウエイトに大分前から居住している人たちであり、何代もクウエイトに住んでいるにもかかわらず、いまだに国籍を与えられないでいる人たちだ。
そして最後が、外国からの出稼ぎ者たちだ。彼らは月額150ドル程度で働いているのだ。
ここで書いたシーア派のクウエイト国民たちは、クウエイトではやはり、ある種の差別の対象となっており、スンニー派の国民とは、違う待遇がなされている。こうした社会事情が、今回の選挙でイスラミストの台頭、という状況を生み出したのかもしれない。