ブッシュは何のために中東を歴訪したのか

2008年5月18日

 ブッシュ大統領がイスラエルの建国60周年記念参加と、サウジアラビア訪問、最後に、エジプトのシャルム・エルシェイクで開催されるWEF (世界経済フォーラム)に参加する目的で、中東を歴訪している。

 イスラエルのクネセト(議会)での演説が、あまりにもイスラエル寄りであることから、アラブ諸国はおしなべて彼を非難している。

 ブッシュ大統領は今回の歴訪で、以下のような目的を、達成しようと思っていたようなのだが。

 

:イスラエルに対する支持を強調する。

:パレスチナ問題を進展させることを確認する。

:サウジアラビアに石油増産を促して油価を下げる。

:イラン敵視に対する支持の取り付け。

:アラブ諸国で悪化したブッシュ大統領のイメージ改善。

 

 イスラエルに対しては、大いにイスラエル国民の期待に答えたようだが、イスラエル国民は同時に、イランの核に対する断固とした対応を、アメリカがとることを期待していたろう。ブッシュ大統領のクネセトでの演説は、何処までこのイスラエル国民の要望に、答えられたのだろうか。

 パレスチナ問題の解決と、パレスチナ国家の樹立について、ブッシュ大統領は今年中を強調しているが、誰もそれを信じてはいまい。ブッシュ大統領のパレスチナ問題に対する発言を、信用しているアラブの首脳は、皆無ではないか。それは、最も新米の、ヨルダンのアブドッラーⅡ世国王ですらそうであろう。

 パレスチナのマハムード・アッバース議長は、ブッシュ大統領がパレスチナ国家の夢を語ってくれることが、彼の立場を強化するると同時に、彼に対する信用を、失墜させる原因にもなろう。

 サウジアラビアに対しては、石油価格を引き下げることを目的に、石油の増産を要請したが、そもそも、石油価格が高騰したのは、アメリカの市場での投機的な思惑によるものであり、サウジアラビアは世界市場で、石油が不足しているから、価格が高騰しているのではないことを知っている。当然のことながら、サウジアラビアのブッシュ大統領に対する返答は「ノー」だった。

 イランに対する軍事攻撃への支持でも、イスラエル以外のどの国も、賛成の立場を示し,支持してくれることは、確認できなかった。

これも当然であろう。アメリカがイランを確実に、攻撃するのであれば話しは別だが、アメリカの立場があやふやななかで、イラン攻撃支持を表明すれば、もし戦争が起こらなかった場合には、それなりの報復があることを、考慮しなければならないからだ。

 結果的に、ブッシュ大統領は彼の最後の任期を、アラブからの支持のなかでで過ごそうとしたようだが、全く逆の結果となったということであろう。唯一、ブッシュ大統領を歓迎してくれたのは、イスラエルだけだった、ということのようだ。

そうなると、感情的になったブッシュ大統領が、強硬な手段を選択する可能性が、高まったということではないか。まさに、破れかぶれということであろうか。あるいは、ブッシュ大統領がそのような立場になるように、誰かが仕向けた、ということもありえようが。